転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~


「くそっ……! くそっ……! くそっ……!」

 領都マノリアを追われて帰路を行く最中。
 ドレイクは馬車の中で足を小刻みに揺らしながら、悔しげな声をこぼしていた。
 その様子をヒルマイナは隣から不安げに見つめている。

「アウルの奴、育てられた恩義も忘れたのか……!」

 クロウに言い負かされて追い返された事実もそうだが。
 なによりあの気弱で大人しかったアウルに拒絶されたことが、飼い犬に手を噛まれたようで腹立たしくて仕方がなかった。
 あいつさえ帰ってくると言っていれば、すべて丸く収まっていたのに。
 今一度その悔しさが燃え上がり、揺らしていた足が一層激しさを増す。
 そんなドレイクを宥(なだ)めるかのように、ヒルマイナが彼に声をかけた。

「し、しかしこれで曖昧だった事実もはっきりしました! 王国側が発明によって得た利益の一部は、アウルの手元に入ってきています。向こうが頑なにアウルを返そうとしなかったのもきっとそれが理由です!」

「俺たちの貴重な財産を横取りしおって……!」

 ヒルマイナの声かけも虚しくドレイクの怒りは募るばかりである。
 ドレイクにとって今回の件は、目の前に大金があってそれを取れるチャンスをクロウに邪魔されたという認識でしかなかった。

「アウルさえ……アウルさえこの手に戻ってくれば……!」

 大幅に傾いてしまった自分の領地の経営を立て直すことができるというのに。
 その思いがいよいよ頂点にまで達し、ドレイクはドス黒い決意を固める。

「……無理矢理にでも奪うしかない! 奴らから」

 誘拐。ドレイクの呟きを耳にしたヒルマイナの脳裏に、そんな言葉が一瞬よぎって冷や汗を滲ませる。
 しかしそうする以外に道がないのも事実で、逆にそれさえ叶えばこの劣勢は一気に覆ることになるのだ。

「アウルを攫い、魔道具か薬、あるいは拷問でもなんでもいい、アウルに〝うちにいたい〟とひと言言わせるだけでこちらが勝てるんだ」