自分が本当にいたい場所。
一緒に時間を過ごしたい人。
それはクロウなのだと、実父のドレイク・ダスターにはっきりと告げた。
虐げられた過去があって強烈な苦手意識があったが、クロウが手を繋いでくれている心強さで不安を振り払うことができた。
よもやあの気弱だったアウルに拒絶されるとは思っていなかったのか、ドレイクは呆然とした顔で固まる。
次いで怒りの感情で顔を歪ませると、舌打ち交じりに声を漏らした。
「アウルゥ……! この親不孝者がァ……! さっさとうちに戻ってくると言……」
足を一歩踏み出しかけた、その瞬間……
先にクロウが足を一歩前に出し、ドレイクの動きをせき止めた。
「これ以上うちの領内で粗相をするようなら、力尽くでこの場から追い出すぞ」
「くっ……!」
血染めの貴公子からの強行宣言。
彼の名を聞いたことがある者なら抗いようのないひと言だった。
ドレイクは悔しげに顔をしかめて、ヒルマイナに「出るぞ」と震えた声で告げる。
それ以上はなにも言うことが見つからなかったらしく、ふたりは素直に検問所から出ていこうとした。
扉から外に出て、そのまま立ち去ろうとした時、クロウが奴らの背中に声をかける。
「貴様らはアウルのことを、魔法使いとして素質があるかどうかでしか見ていなかった。たとえ魔法が使えなくとも、この子には莫大な量の魔力とそれを生かせるだけの規格外の発想力があったというのに」
ふたりは足を止め、こちらを振り返ることなくクロウの声に耳を傾ける。
「実の息子の気持ちと意思を尊重し、大切に育ててあげることができたら、ダスター家の運命は大きく変わっていたことだろう。これからはもう少し、常識的な判断力と冷静さを持って生きることだな」
これはおそらく、クロウなりの気遣いだろう。
ドレイクとヒルマイナのための気遣いではない。
もし次、このふたりが世継ぎを産んだ際に、アウルと同じようなことが起きないようにするための子への気遣いだ。
その言葉が心にまで届いたかどうかは定かではなかったが、ドレイクとヒルマイナはなにも言うことはなく、そのまま領都から立ち去っていった。

