クロウに手を引かれる形で、アウルは領都の門の検問所へと向かった。
数人の従者も連れて屋敷を出て、領都の通りを歩いている間、周りからたくさんの視線を浴びることになる。
あの血染めの貴公子が子供の手を引いて歩いている。
領民たちにとっては一大スクープだったようで、先に進むほどに野次馬たちが増えていった。
しかしクロウは一切顔色を変えず、戦場に赴く戦士のような面持ちで手を引き続けてくれる。
周りの目を気にしている暇なんてない。いち早くアウルの心から不安を取り除いてあげようという意思がその表情から伝わってくる。
アウルもそのことを察し、静かにクロウに手を引かれていると、やがてくだんの検問所へと辿り着いた。
ここに近づくほどに緊張感が増していくかと思ったが、クロウが手を繋いでくれていたおかげか足はしっかりと動いてくれた。
ただ、すぐ目の前にやってくると、さすがに少し体に力が入ってしまう。
そのことを繋いだ手から感じ取ったのか、クロウが気を遣うように顔を覗き込んできた。
「案ずるな。アウルには一切手出しをさせない。それに俺だけではなく、周りの皆もアウルの味方だからな」
クロウの言葉と同時に、ついてきてくれた従者たちも頷き、強張っていた気持ちが楽になった。
覚悟を決めて前を真っ直ぐ見ると、従者たちが扉に手をかけて開けてくれる。
いよいよ検問所の中に入ると、それなりに広い部屋に簡素な木造の椅子と机が用意されていた。
そこにはふたりの人物が腰かけていて、こちらが入ってきたことに気付くと視線を向けてくる。
イエローゴールドのセミロングの髪とサファイアのような碧眼の二十代ほどの男性。
ライトブラウンの長髪とミルクチョコレート色の瞳の同じ年頃の女性。
ふたりを見た瞬間、ドクッ!と自分でわかるほどに心臓が鼓動した。
影武者を寄こしてきたという可能性が少なからずあったけれど、間違いなくここにいるのはドレイク・ダスターとヒルマイナ・ダスターだ。
目が合った瞬間、実家で虐げられていた記憶が脳裏に蘇る。絶えず浴びせられていた罵声が耳の奥底で鳴り響く。
自分でもわかるほどに手が冷たくなったのを感じていると、ドレイクは椅子から立ち上がり、第一声のために息を吸い込んだ。
思わず怖くて身構えたその刹那、ドレイクが開口一番に放った台詞は意外なものだった。
「おぉ、本当にアウルじゃないか! 心配していたんだぞ!」

