思わずアウルは返事を忘れてクロウの方を見てしまう。
「……ここはアウルの部屋だから俺は返事をしないぞ」
「あっ、そうでちた」
つい執務室にいる感覚で、クロウが返事をするのではないかと思ってしまった。
遅れて「どうじょー」と言うと、意外なことに扉を開けて入ってきたのはストークで、目的はクロウの方だった。
「突然失礼いたしますクロウ様」
「んっ、俺の方に用事があったのか? なんの要件だストーク?」
「えっと、クロウ様にお会いしたいという方がお見えになられて」
「俺に? 人と会う約束はしていないはずだがな」
領地内の町や村から町長や村長が来ることはしばしばあるが、その時はどこどこの〝町長〟や〝村長〟が来たとストークは言う。
会いたい人間が来た、なんて言い方は一度も聞いたことがない。
クロウもストークも知らないような人物で、あまりにも突発的な訪問のようだ。
「クロウ様の仰る通り、来訪の約束を交わしてはいないらしく、現在は領都の門の検問所でお待ちいただいております」
「その口ぶりから察するに領民の誰かではなさそうだな。礼節もわきまえない不届き者は突き返して構わんぞ。正式に来訪の約束を取り交わすのなら客人として歓迎するとも伝えておけ」
「はい、私もそう思いましたのでお引き取り願おうと思ったのですが……」
不意にストークがアウルを一瞥する。
なにか含みのあるその視線に疑問を抱いていると、ストークがクロウを手招きして耳を拝借したいという手振りを加えた。
クロウも不思議そうに首を傾げたが、ストークの手招きに応じて耳を近づける。
アウルとロビンには聞こえない声量でストークが囁(ささや)くと、クロウはハッとした顔で黒目を限界まで見開いた。

