今も魔物被害が絶えず、数年前には大規模な魔物災害が起きたその場所は、話に聞いた限りだとひとりの青年が管理、運営を任されているという。
エグレット公爵家の血染めの貴公子と名高い、クロウ・エグレットが。
もしも、だ。もしもアウルが魔物の餌になっておらず、なんの間違いかそのエグレット公爵家の冷徹子息に拾われていたとしたら……
そして信じがたいことにあの無能のアウルになにかしらの才能があり、魔道具開発を始めて遅咲きのその才が花開いたのだとしたら……
「アウル、お前なのか……? 本当にお前が、このような偉業を……」
ふと、ドレイクは視線の端に、今しがた己で散らした忌まわしい被害報告と請求金額の書類たちを捉える。
次いでアウルの輝かしい功績が綴られた情報誌に視線を戻して、思わずギリッ!と歯を食いしばった。
革新的な発明を成し遂げて、その独占権を王国側に譲渡。おそらくくだんの発明によって国が得た利益の一部を受け取る契約になったはず。
ここまで話題になるということはその実用性の高さも折り紙付きで、瞬く間に発明品は各地へと羽ばたいて全国的に普及する。
その際の利益はあまりにも莫大なものになることは想像に難くなかった。
アウルを追い出さずに、自由に魔道具の研究でもさせていれば。
独占権を王国側に譲渡せず、うちの領地でその魔道具の量産体制を築いていれば。
とてつもない利益のそのすべてが、自分の手中に収まっていたはずなのに。
現在頭を悩ませている、領地開拓で生じた被害額と請求額の支払いなんて屁でもない。
一度に全額を支払っても余裕で釣りが出て、その後豪遊をしても余りあるほどだろう。
ドレイクの胸の内に激しい後悔が生まれ、気付けば持っていた情報誌を怒りのままに握り潰していた。
「ドレイク様、諦めてしまわれるのはまだ早いです」

