「くそっ!」
留まるところを知らない被害に、ドレイクは怒りに任せてテーブルの上に残されていた書類を片手で振り払う。
主人のその様子を見た従者は気まずそうな顔で会釈をすると、そそくさと逃げるように執務室を出ていった。
ひとり残されたドレイクは憤りを落ち着けるように息をゆっくりと吐き出し、今後の対応策を考える。
これまでの被害の総数はあまりにも多いが、一つひとつに目を向ければそこまで甚大なものがあるわけではない。
時間と人手と資源を使えばどうとでもなるものばかりだ。
しかしそのための資金がなく打つ手がない状態である。
前妻であるマーレットの生家から、領地開拓のための資金提供を受けはしたが、その金はすでに底をついている。
他に頼りになる資金源がないため、そこの問題をどうにかしない限り解決は見込めなかった。
「金だ、金がいる……! 逆に言えば金さえあればどうとでもなるのだ……!」
必死に頭を回してどこからか金を引き出せないか熟考していると、再び執務室の扉が開かれた。
「ドレイク様!」
「今度はなんだ!?」
「も、申し訳ございません」
入ってきたのは妻のヒルマイナだった。
そのことに遅れて気が付いたドレイクは、脅かしてしまったことを謝罪する。
「す、すまないヒルマイナ。まさか君が来るとは」
「いえ、ドレイク様も気を張り巡らせてお疲れでしょうから無理はありません」
ヒルマイナは少々戸惑った様子だったものの、ドレイクが繊細になっていることをわかっているため理解を示す。
そして咳払いをひとつ挟んでから、ここへやってきた目的を果たすことにした。
「それよりもこちらをご覧ください!」
「なんだこれは? ただの情報誌ではないか? これをわざわざ持ってきたのか……」
ヒルマイナが手渡したものは誰でも気軽に手に入れることができる情報誌だった。
主にアッシュ王国や近隣諸国で起きた直近の出来事が記録されており、分野ごとに記事が分かれている。
特別珍しいものではなく、なぜそんなものを慌てた様子で持ってきたのかドレイクは疑問に思った。
するとヒルマイナは、記事のうちのひとつを、微かに震えている指で示す。
「こちらの一面に書かれている記事をご確認ください」
「んっ? 見たところ科学分野の記事のようだが、これがいったいなんだと……」
わざわざ今見せるようなものなのか。
そう思っているドレイクの視界に、目を疑う名前が飛び込んでくる。
「アウ、ル……? アウル・エグレットだと……?」

