「氷室の一件では領内の危機も救っていただき、送風機から得られる報酬も領地のために譲ってもらい、アウル様が来てからマグノリア領の風向きは大きく好転しましたね」
次いでストークはこちらに視線を移すと、再び柔和な笑みを浮かべて続けた。
「そしてクロウ様も、アウル様が来てからお変わりになられた。アウル様は皆にとっての救世主のような方ですね」
「……そうかもな」
あの日、あの時、独りぼっちでいるアウルと出会ってから、色々なことが変わり始めた。
クロウ自身は内面的に影響を受けた自覚はないけれど、周りの環境は確かに大きく変わったように思える。
元より子供好きでアウルの愛らしい見た目を好いていた使用人たちは、氷や送風機の件でアウルに深く感謝をしている。
使用人のためにと魔道具を作る優しさが心に響き、すでにアウルと使用人たちの間には絶対的な絆が育まれているのだ。
先ほどもそう。祝宴であちこちから祝福されていたアウル。彼を中心に笑顔が広がるように、そこは穏やかで温かい空間になっていた。
(もしかして、俺が目指していたのは……)
多くの民を先導するのに、力と威厳は確かに大事なことだ。
しかしそれ以上に大切なことをアウルに教えられたような気がする。
誰かのためを思って行動する、目に見えた優しさだけでも、ここまで多くの人々から慕われることができる。
思いやりと繋がりだけでも、皆はしっかりとついてきてくれる。
それを知ることができたから……知らぬ間にアウルに教えられていたから、我知らず周りへの態度が柔らかいものになっていたのかもしれない。
「……敵わないな」
本当に大事なものは、力と威厳などではない。
周りに人々が集まり、笑顔に囲まれていたアウルを思い出しながら、クロウはアウルの頬を人知れず撫でて凝り固まっていた考えを改めることにしたのだった。

