ほんの些細な変化ではあるものの、常にそばにいる従者のストークからしてみたら大いなる変革と言わざるを得なかった。
「前々から従者や使用人に対する気遣いはあったのに、素直に言葉にすることを避けているように感じておりました。むしろあえて突き放すような言い方をしているとさえも。そのせいで冷たい人物だと思われてしまうことが多く、クロウ様を恐れている人は今も大勢います。実は私もそのうちのひとりでした」
ストークは自分自身に呆れるように、苦笑を浮かべながら肩を竦める。
クロウとしてもそのような気がしていたので、特別驚きはしなかった。
むしろそうなるように立ち回っていたのは自分の方だから。
エグレット公爵家の人間としての威厳を保つために、親しみやすさを感じさせないように努めていた。
いや、今もそうしているつもりではある。
ただそれはクロウの中だけの話だったようだ。
「しかし最近になって、クロウ様はお気持ちを素直に言葉にしてくださっています。それによって屋敷の人間たちもクロウ様のお優しさに気付きつつあり、少し前まで緊張感で張り詰めていた屋敷全体の雰囲気が、とても柔らかいものになってきたと感じております」
それはクロウも薄々感じている。
屋敷の空気が軽くなってきたと。
風通しがよくなって過ごしやすくなったような気がすると。
それが自分の気持ちの伝え方が変わったことによる影響だとは、あまり思っていない。
一番の要因となったのは……
「屋敷から緊張感が抜けたのは、この出自不明の不可思議な子供のせいではないのか」
「ははっ、それも確かにその通りでございますね」
ストークは思わずといった様子で笑い声をあげる。
思えば彼のこのような反応や表情を見られるようになったのも、確かにここ最近からのような気がする。
ストークはクロウの膝を枕代わりにして眠るアウルを見つめながら、感慨深い声音で言った。
「アウル様をこの屋敷で育て始めてから、屋敷の空気が穏やかなものになりました。義務的に作業をこなすだけだった使用人たちにも笑顔が増えて、現実的な面ではアウル様がお作りになった送風機で使用人たちも快適に暮らせております」
くだんの送風機はクロウの執務室にも設置されている。
おかげでこの時期の暑さに悩まされることがなくなり、クロウも過ごしやすくなったと感じていた。

