翌日。
晩餐会という形で、ささやかながらアウルの祝宴を催すことになった。
屋敷の食堂を広々と使い、立食形式で豪華な食事を好きに摘まめるという自由な宴会である。
招待客として領内の町や村を仕切る町長や村長も招いて、今後の領内の開拓や改築における軽い会合の場にもなった。
一度に多額の資金が舞い込んできたため、どの辺りの開拓や改築を優先するか。
領内の町村の近況に基づいて、新たな資金の活用方法がないか。
などの話し合いを、クロウが主軸になって行い、彼は祝宴中にも領主としての責務を果たしていた。
しかしさしものクロウも王都から帰ってきたばかりで疲れていたため、区切りがいいところに差しかかって一度話し合いを中断する。
甘いものを軽く皿にのせて食堂の隅に引っ込むと、並べてあった椅子に腰かけて祝宴の様子を眺めたのだった。
すると遠くの方で多くの人々に囲まれているアウルを見つける。
サイズに合わせて作ったばかりの小さな黒ジャケットに、赤い蝶ネクタイをきっちり締めて、大きな大人たちの陰に隠れてしまいそうになりながら話をしている。
ここからでは話の内容は聞こえなかったけれど、おそらく送風機の発明について色々と問いかけられているのだろう。
やがて一通りの団体との会話を終わらせたアウルが、クロウを見つけてトテトテと逃げるようにやってくる。
隣の椅子に座ったアウルは疲れている様子だったため、気になったクロウは問いかけた。
「招待客たちとかなり話し込んだみたいだな。食事は満足にできたのか?」
「いっぱいおはなちちて、あんまりたべれてない……」
だろうと思ったクロウは手に持っていた皿を差し出す。
その上にのるスイーツを見たアウルが、食べてもいいのかという視線を向けてきたので、首を微かに動かして促した。
アウルは嬉しそうに微笑むと、皿から柔らかめのクッキーを取ってもぐもぐと食べ始める。
しばらくアウルに食べさせながら会場を眺めていると、不意に膝になにかが落ちてきた。
それはたくさん話をして甘いものでお腹を膨らませたアウルの小さな頭だった。
どうやら眠ってしまったらしい。
仕方がないと思ったクロウはそのまま膝を枕代わりにさせて、上着を脱いで小さな体にかけてやる。
アウルが微かに身じろぎをすると、滑らかな銀髪が膝の上でするりと流れて、クロウは自ずと柔らかいその髪をそっと撫でた。
それが心地よかったのか、眠っているアウルが無意識に体を寄せてくれる。
一定の呼吸を繰り返し、静かに上下する小さな体を優しく撫でながら、クロウは心の中でアウルに告げた。
(こんなにも小さいのに、本当によく頑張ってくれたな)
膝の上で心地よさそうに眠る幼子を見つめて、今までに感じたことのない温かい気持ちに満たされながら、ふたりだけの静かな時間を過ごしたのだった。
やがて従者のストークがこちらを見つけて、ちょうど欲しいと思っていた飲み物を持ってやってくる。
「お疲れ様です、クロウ様」

