転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~


 名前はヒルマイナ。ハックル侯爵家の子女で年齢は二十八歳。
 ライトブラウンの滑らかな長髪とミルクチョコレートのような色合いの茶目が特徴的で、童顔気味だった実母のマーレットと比べて目鼻立ちがはっきりしている綺麗系である。
 父のドレイクとは貴族学校時代からの知り合いで、ふたりは親しく過ごしていたという。
 そしてマーレットの死後、ドレイクはいまだに独り身だったヒルマイナにアプローチをし、こうして継母としてダスター家にやってきたというわけだ。
 それをアウルは祝すことなく、心の中で冷ややかな目を向けていた。

(前の奥さんが死んですぐに再婚か。思いを寄せていたご令嬢にここぞとばかりに迫った感が否めないな)

 ドレイクとマーレットは政略結婚だった。
 ダスター伯爵家の領地開拓のために資金が必要で、マーレットの生家から資金提供を受けられるようにふたりは結婚した。
 ドレイクとしては望まない結婚だったのだろう。
 本当に一緒にいたかった人物は貴族学校時代から親しくしていたヒルマイナの方で、だからマーレットの死後すぐにヒルマイナと再婚をしたのだ。
 すでにマーレットの生家から充分な資金を得ているし、産後の体調不良が原因の病死のため再婚しても咎(とが)められることはない。

 だが息子のアウルからしてみれば不愉快極まりないことだった。
 大切な母の死を父がなんとも思っていなそうで、むしろこれを好機として捉えていそうなところが特に。
 アウルは何度もマーレットに守ってもらっていたので、彼女の母親としての優しさと誠実さを知っているから尚のことだった。
 せめて継母のヒルマイナが良識的な人物であれば話は別だったのだが……

「あなたがアウルね。これからは私があなたの母親よ。だから私の言うことは絶対に聞きなさい」

 類は友を呼ぶ、と言うべきか。
 ヒルマイナもドレイクに負けじと、なかなか難のある性格をしていた。
 必要以上に厳しくしてきて、まだ子供であろうと暴力も厭(いと)わず、少しでも気に食わないことがあれば怒鳴ってくる。