史桜先輩の泣きそうな顔なんて初めて見た。

ううん、よく考えれば先ほどまでの冷たい表情や声も見たことなんてなかった。

史桜先輩はいつだって私に優しく温かい雰囲気で接してくれていた。

今の史桜先輩の泣きそうな顔を見ると、史桜先輩も何かに苦しんでいるようで。

全てを明かしていないようにすら感じてしまう。



「史桜先輩、ちゃんと話して」



私まで泣きそうになってしまいながら絞り出した質問に、史桜先輩は何とか声を出すように返答する。

「ちゃんと話したよ。今の話が全てだ」

「でも、じゃあなんで……！」

「俺がどんな感情で今までの行動を行ったとしても、護と想代を苦しめたことに何も変わりはない。そうだろ？」

史桜先輩が自分を嘲笑するように笑って、護くんにそう問いかける。