《SIDE : 史桜》



何も良いことをしていないのに、良い人ぶることを人は「偽善者」と呼ぶ。

悪いことをするなら、悪人らしくいないと。

被害者ぶることなんてしたくない。




だから、俺は徹底的に悪になる。




始まりは、大学生の時から想いを寄せていた想代が俺の会社に就職したことだった。

会社ですれ違って話すだけでも楽しくて、少しの冷たい表情すら想代に向けることは一度もなかった。



だから、簡単に俺の気持ちは両親にバレた。



父は本間財閥の会長だった。