「"あの人"の正体はね、数年前に自殺した磯部咲さんって方なんだって」
「自殺!?」
真紀子ちゃんは目を大きくして、手で自分の口を塞ぎました。
「"あの人"…磯部咲さんは、昔うちの学校の南トイレでイジメられていて、ある日トイレの窓から飛び降りたみたい」
「その、磯部咲さんって人もうちの学校にいたんだね」
「そうそう、だから"あの人"は最初に見た時うちの学校の南トイレの前にいたんじゃないかな?」
「そういうことか」
「それで、いじめっ子たちは全員磯部咲さんに殺されたんだって」
「えっ、そうなの?でも、どこからそんな情報を?」
一番聞かれたくなかった質問をされてしまいました。
敬太さんと会っていたことを知られたら、体調が悪いと嘘をついたことになります。
私は必死に考えました。
「学校の掲示板ってあるじゃん?そのコメント欄で教えてもらったんだよね」
考えた末に出てきた答えがこれでした。
「掲示板か!菜花ちゃんも掲示板やってるんだね。誰が教えてくれたのか見てもいい?」
そう言って真紀子ちゃんはスマホを取り出しました。
本当はコメントではなく、直接メッセージが来ました。
なので、コメントがないと嘘がバレてしまいます。
「えーっと、その投稿もう削除したんだよね…」
また、今日何回目かの嘘をつきました。
「そっか、残念」
真紀子ちゃんは肩をガクンと落として下を向きました。
「ご、ごめんね…」
「ううん、いいの。ちょっと考え事してただけだから」
落ち込んでいるように見えただけで、実は考え事をしていたそうです。



