しばらくして、彼はゆっくり顔を上げました。
「菜花ちゃんはこれを知ってるかな?
"あの人"の話を聞くと見えるようになる。
誰かに一回話すとニヤニヤしているように見えて、二回話すと追いかけてくるように見える。
そして自分が話した相手から"あの人"の話をされると殺される」
私の仮定は間違っていませんでした。
「はい、知ってます。私もそう考えていたので」
そう言うと敬太さんは目を大きく見開いて、
「君、よくこんなこと思いついたね。俺でも誰かから聞かないとわからなかったよ」
と言って小さく拍手していました。
「あ、ありがとうございます…」
私は小さい声でお礼を言いました。
「それを知ってるってことは話が早いね。ただ"あの人"の話をしなければいいだけさ」
そんなことは知ってるんですけど…。
とは言わずに、「わかりました」と返事をしました。
「それと、"あの人"の正体は知ってる?」
「わからないです」
"あの人"の正体…それは私が一番知りたかったことだ。
敬太さんは何か知っているのだろうか。
「"あの人"の正体は、数年前に自殺した磯部咲さんなんだ。彼女は酷くいじめを受けていてね、そのイジメの拠点がトイレだったんだ」
敬太さんの話によると、磯部咲さんはあの南トイレでイジメられて、南トイレの窓から飛び降りて自殺したとのことだった。
「そんなことがあったんですね…」
「そうそう、その後いじめっ子達は"あの人"に殺されて全員亡くなったんだとか」



