王子様、私はヒロインじゃありませんよ!?

 俺は俯き、拳が色を失うくらい強く握りしめた。


 深呼吸をしようとしても、どうもできない。


 浅い呼吸を繰り返すうちに、あの女だけでなく、自分に嫌気がさしてきた。


 どうして、どうしてこんな思いをしなきゃいけないんだ。


 こうやって苦しみ続けるくらいなら、いっそ……。




 そう思った時だった。




 少し強くて、優しい風が吹いて、紅葉がより一層多く散った。


 ふと顔を上げると、息を切らした氷雨さんが立っていた。


 その顔は相変わらずの無表情。


 「何をしに来た」という言葉をとっさに飲み込んだ。


 きっと、いや、間違いなく、心配して来てくれたんだろう。


 分かっているけど……そんなことに気を配る余裕は無かった。