王子様、私はヒロインじゃありませんよ!?

「『汐ちゃん、今までごめんね。私、旦那様に言われて仕方なく……。 本当は、貴方のことを愛していたのよ。 私を許して』
……って、今でも吐き気がする。 あの時、ああ、この2年間で俺は変わったんだな。 中身じゃなく、外見が。
この女が好むような、❝男❞になったんだなって、理解したよ」



 怒りを通り越して、俯瞰するような声色。


 もう、嫌悪とか、怒気とか、そんなものじゃなくて、心の底から❝どうでもいい❞と言うような口調だった。


 けれど、その端に、寂しさと悲しみが滲んでいるような気がするのは、私の勘違いだろうか。



「俺は鼻で笑って、養母を追い返した。
もういいから、俺と関わるな、そう言ったのにさ……今になって付き纏われるようになったよ。
それで、俺もストレスを発散するように女遊びをするようになって。
ふっ、今考えると最低だな。 俺も結局、あの女と同じなんだ」



 そう言い切った久東君の表情は、少し疲労を感じた。


 久東君は一度も、久東華子(あの人)のことを❝母親❞とは呼ばなかった。


 ❝養母❞とは言ったけれど、そこに母親に向ける感情は一切無かった。


 そして、久東君は最後に、絞り出すような声で



「……だから、俺とは関わらない方がいいよ。 こんな穢れた人間。
❝生まれつき❞お嬢様のあんたには、耐えられないと思うから」


 
 と呟いた。