王子様、私はヒロインじゃありませんよ!?

「あの日、大会が終わった後、僕は家に帰ろうとしたんだ。 雨の日だったんだけど……トレーニングも兼ねて走って帰ることにして」


「へー……」



 どんどん、葉室君の表情が暗くなる。


 ……話の行く先が怖いよ。


 けれど、最後まで聞かないと。



「それでね、歩道橋を通ったんだ。 雨で足元が滑りやすかったのに、調子乗っちゃってさ……。 ――階段から落ちた」


「……そうなんだ」



 私は正直、驚いた。


 葉室君の辛い過去を聞いたから……でもあるけど、それだけじゃない。


 その葉室君の表情が、苦しんでいるようには見えなかったから。


 内容もさることながら、声のトーンは確かに暗かったけど……私はなんとなく思った。