王子様、私はヒロインじゃありませんよ!?

 俺は、氷雨と会う時間を確保したくて……氷雨を我が家に招いた。


 もしかしたら、我が家を見ることで、昔の記憶を思い出してくれるんじゃないかと、期待して。


 けれど、結局は失敗に終わった。


 氷雨は、最後まで記憶を思い出すことはなく、俺の問いにも、不思議そうにするだけだった。


 仕方ない、分かっていたことだ。


 そう思うのに……どうしてもショックを受けている自分がいる。


 いや、本当ならここまで落ち込んでいるはずがない。


 ただ、ただ……今日は親父に呼び出されて、氷雨と話す時間が無かったからだ。


 しかも、俺がいない間、(他の男)と2人切りだったって聞いて……正直、嫉妬してしまったのだ。


 まだ(・・)汐は氷雨に惚れてないとはいえ、あの魅力にあらがうのは不可能だ。



「……あーーーーー」



 突然、そんな声を出した俺に、執事の爺が不思議そうな顔をする。