『仲の良いお二人とも
失せモノは確認できたカナァ?』
黒いピエロがひらりと近づいてくる。
「は、はい。ありがとうございます……」
祥ったら、礼儀正しく感謝なんかしちゃって。
体育会系の厳しさを叩き込まれているからか、もはや反射だ。
性格が良すぎて心配になる。
『フフ、ありがとう……か
言われたことがないから
すこしキュンとしてしまったヨ』
穏やかに笑う黒ピエロ。
なにがキュンだ、冗談じゃない。
俺は祥を背中に隠した。
『ふたりはしばらくのあいだここに匿うヨ!
約束だからネ☆
ピエロ鬼たちがいなくなったタイミングで
トビラの鍵を開けてあげよう
それまで──』
また目の前になにかが出現した。
『ボクたちが紙芝居を
読んであげよう☆
作品は
"クリスマスキャロル"
ダヨ!』
そのチョイスにあきれてしまう。
「いや、どう考えてもキミたち側が教え受けるべき話だろ。なにが悲しくてピエロどもに読み聞かせられるしかないんだ」
『つれないこと言わずに!
サァサァ、座った座った〜』
黒と白のピエロたちは、おどけながら演じながらペラペラと紙をめくっていく。
祥は目をうるうるさせて見入っていた。
俺はあぐらをかきながら、退屈な気持ちで頬杖をつく。
生憎だがこういう物語は好かない。
戻れも進めもしないからこそ、今を生きるんじゃないか。
全力で、守りたいもののために。
ちらりと隣を見る。
この世でいちばん愛おしい横顔。
ピエロじゃなくて俺を見てほしいのに、視線は重ならない。
手だけを握った。
なにがあっても離さない。
ピエロが最後の1ページを読み終えたとき、扉の解錠音が響いた。



