眉を寄せ、泣き顔にあきらかな怒りをにじませている。
それはきっといろんな感情が溢れすぎてどうにもならない表情。
俺の死を一度経験しているのもあるのだろう。
傷に敏感な優しいお姫様。
俺の喪失がトラウマになっている姿があまりにもいじらしい。
「祥…この傷はね」
「…いや、ううん、大丈夫。ごめん、怒りたいわけじゃないの。話はあとで聞く。あとで聞くから…」
ぎゅうと祥に抱きしめられた。
「生きていてくれてありがとう、お兄ちゃん」
不安定な彼女の声音が一瞬で力を取り戻す。
あらためて妹の精神的成長に驚かされる。
自身の不安も恐怖もすべて飲み込んで、俺をまるごと包んでくれるようなぬくもり。
どんな気持ちで待っていてくれたのだろう。
人が勝負をする前に、負けることを考えてしまう理由。
それは覚悟のなさではなく
遺した者へ負わせる悲しみへの罪悪感を想像することから生まれるのかもしれない。
穏やかに聞こえてくる大好きな祥の鼓動の音。
海のような大きな愛情に今度は俺が溺れそうだった。



