○白川出版社 編集部 朝10時

山田編集長が新しい企画を発表している。

山田編集長:「今月から、新しいファッションブランドの広告を担当することになった」

佐々木:「どこのブランドですか?」

山田編集長:「フランスの高級ブランド、『エトワール』だ。日本進出のキャンペーンを手伝う」

葵:「すごいですね」

山田編集長:「担当は葵くん。先方のディレクターが明日来社する」

葵:「私が?ありがとうございます!」

新しい仕事に意欲を見せる葵。蓮のことから気を紛らわせられると思っている。


○神崎コーポレーション 社長室 昼12時

田中秘書が報告書を持って入ってくる。

田中秘書:「社長、白川出版社の新規プロジェクトについて情報が入りました」

蓮:「どんな?」

田中秘書:「葵さんが、フランスのファッションブランドの担当になったそうです」

蓮:「誰が相手?」

田中秘書:「エトワールの日本進出チームです。ディレクターは...隼人という方です」

蓮の表情が変わる。

蓮:「男性か」

田中秘書:「はい...」

蓮:「詳しく調べて」

田中秘書:「承知しました」



○白川出版社 会議室 翌日14時

会議室に、爽やかな笑顔の男性・隼人(はやと)(26)が入ってくる。カジュアルだが洗練された服装。

隼人:「初めまして、エトワールの隼人です」

葵:「担当の葵です。よろしくお願いします」

隼人:「こちらこそ。葵さんの実績、拝見しました。素晴らしいセンスですね」

葵:「ありがとうございます」

隼人:「このプロジェクト、一緒に楽しみましょう」

隼人の明るく優しい雰囲気に、葵は自然と笑顔になる。



○白川出版社 会議室 14時30分

プロジェクトの詳細を話し合う二人。

隼人:「ターゲットは20代後半から30代前半の女性。エレガントだけど親しみやすいイメージで」

葵:「承知しました。ビジュアルは...」

二人の会話は弾む。隼人は葵の意見を尊重し、対等に話し合う。

隼人:「葵さん、コーヒーでも飲みながら続けませんか?」

葵:「いいですね」


○白川出版社向かいのビル 15時

蓮が望遠鏡で会議室を見ている。葵と隼人が笑い合っている様子が見える。

蓮:「あの男...」

スマートフォンを取り出し、田中秘書に電話。

蓮:「隼人の素性、全部調べろ。今すぐだ」

田中秘書(電話音声):「承知しました」

蓮の表情は、嫉妬で歪んでいる。

蓮:「葵が笑っている...僕以外の男に」


○白川出版社前 夜18時

退社する葵。隼人も一緒に出てくる。

隼人:「お疲れさまでした。今日は楽しかったです」

葵:「こちらこそ。明日も打ち合わせですね」

隼人:「はい。駅まで一緒に行きませんか?」

葵:「ええ」

二人が並んで歩き出す。

少し離れた場所から、蓮が見ている。

蓮:「一緒に...帰るのか」



○駅前カフェ 夜18時30分

隼人が提案し、カフェに入る二人。

隼人:「葵さん、ファッション業界に興味あります?」

葵:「はい。元々服が好きで」

隼人:「良かったら、今度パリのコレクションの写真見せますよ」

葵:「本当ですか? 嬉しいです!」

自然な会話。隼人は葵のパーソナルスペースを侵さず、適度な距離を保っている。

隼人:「葵さん、楽しそうに仕事してますね」

葵:「そうですか?」

隼人:「ええ。でも、時々疲れた顔も見えます。大丈夫?」

葵:「ちょっと...色々あって」

隼人:「無理しないでくださいね。何かあったら、相談してください」

葵、隼人の優しさに心が温かくなる。

葵:「ありがとうございます」



○蓮の自宅 夜20時

モニターに、カフェでの葵と隼人の様子が映っている。葵の笑顔。

蓮:「なんだ、あの笑顔は...僕には見せたことがないのに」

田中秘書から報告が入る。

田中秘書(電話音声):「隼人の経歴を調査しました」

蓮:「言え」

田中秘書(電話音声):「26歳、パリ在住。エトワールのアジア進出担当。学歴は...」

蓮:「家族は?」

田中秘書(電話音声):「独身です」

蓮:「...」

田中秘書(電話音声):「社長、何か?」

蓮:「あの男を、葵から遠ざけろ」

田中秘書(電話音声):「それは...」

蓮:「方法は問わない」

電話を切る蓮。

蓮:「葵は僕のものだ。誰にも渡さない」



○白川出版社 会議室 翌日10時

葵と隼人の打ち合わせが続く。二人の関係は良好。

隼人:「週末、ファッションイベントがあるんですが、良かったら一緒に行きませんか? 勉強になると思います」

葵:「いいんですか?」

隼人:「もちろん。仕事の一環として」

葵:「じゃあ、お言葉に甘えて」

その時、会議室のドアがノックされる。

山田編集長が入ってくる。

山田編集長:「葵、ちょっといいか」



○白川出版社 編集長室 10時30分

山田編集長:「困ったことになった」

葵:「何ですか?」

山田編集長:「神崎社長から、連絡があった」

葵:「蓮さんから?」

山田編集長:「君を別のプロジェクトに専念させてほしいと。エトワールの件は他の者に回すよう要請された」

葵:「なぜですか!?」

山田編集長:「理由は言えないが...かなり強い要請だった」

葵:「そんな...」

山田編集長:「悪いが、神崎コーポレーションは大口のクライアントだ。逆らえない」

葵:「でも、それって...」

悔しさと怒りで震える葵。


○神崎コーポレーション前 昼12時

怒りを抑えきれず、蓮の会社に向かう葵。

受付で蓮に会いたいと伝える。

受付:「申し訳ございません。社長は会議中で...」

葵:「待ちます」

ロビーで待つ葵。30分後、蓮が現れる。

蓮:「葵?どうしたの?」

葵:「話があります」

蓮:「社長室へどうぞ」



○神崎コーポレーション 社長室 12時45分

葵:「なぜ私を隼人さんから遠ざけようとするんですか!?」

蓮:「遠ざける?何のことだ」

葵:「とぼけないでください。編集長に圧力をかけたんですよね」

蓮、沈黙する。

蓮:「...君のためだ」

葵:「私のため? 勝手に決めないでください!」

蓮:「あの男は...君に近づきすぎている」

葵:「それは仕事です!」

蓮:「仕事なら、他の人でもいいだろう」

葵:「あなたに何の権利があるんですか!?」

蓮、立ち上がり葵に近づく。

蓮:「権利? 僕は君を愛している。それだけで十分だ」

葵:「それは愛じゃありません。支配です」

蓮:「君は分かっていない。この世界は危険なんだ」

葵:「危険なのは、あなたです!」



○神崎コーポレーション 社長室 13時

蓮:「...危険?」

葵:「はい。あなたの行動は、全て異常です。監視、尾行、私生活への介入」

蓮:「それは君を守るため...」

葵:「もう、やめてください。これ以上、私の人生に関わらないでください」

蓮、ショックを受けた表情。

蓮:「それは...僕を拒絶するということ?」

葵:「はい。私は、あなたの気持ちに応えられません」

蓮:「でも...僕はこんなに君を...」

葵:「それは一方的です。私の意思を無視している」

蓮、うつむく。

蓮:「...わかった」

葵:「本当に?」

蓮:「ああ。君が望むなら」

しかし、その目には、諦めの色は全くない。


○神崎コーポレーション前 夜19時

会社を出る葵。疲れ切った表情。

暗い路地を歩いていると、複数の男たちが近づいてくる。

男A:「ねえちゃん、ちょっといいかい」

葵:「!」

第1話と同じような状況。葵は走り出す。

しかし、すぐに追いつかれる。

男B:「逃げんなよ」

その時、蓮が現れる。

蓮:「彼女に触るな」

男A:「誰だお前」

蓮は素早く男たちを制圧する。

蓮:「二度と近づくな」

男たちは逃げていく。

葵を見る蓮。

蓮:「大丈夫?」

葵:「...ありがとうございます」

蓮:「だから言っただろう。君一人では危険だって」

葵:「でも...」

蓮:「僕がいなかったら、どうなっていたと思う?」

葵、言葉に詰まる。



○タクシー内 夜19時30分

蓮が呼んだタクシーで帰る葵。

葵:「(また助けられた...でも)」

蓮の行動は確かに異常だが、本当に自分を守ってくれている。その事実に、葵の心が揺れる。

葵:「(どうすれば...)」



○葵のアパート 夜20時

隼人に電話する葵。

葵:「隼人さん、すみません...」

隼人(電話音声):「葵さん? どうしたんですか?」

葵:「プロジェクト、私は外れることになりました」

隼人(電話音声):「え? なぜですか?」

葵:「会社の都合で...」

隼人(電話音声):「そうですか...残念です」

葵:「本当にすみません」

隼人(電話音声):「いえ、葵さんのせいじゃないです。でも...週末のイベントは個人的にお誘いしてもいいですか?」

葵:「え...?」

隼人(電話音声):「仕事抜きで。良かったら」

葵、戸惑う。

葵:「考えさせてください」


○蓮の自宅 夜22時

モニターで、葵と隼人の電話のやり取りを傍受している蓮。

蓮:「個人的に...か」

探偵に電話をかける。

蓮:「隼人という男について、もっと詳しく調べろ。弱点を見つけろ」

探偵(電話音声):「承知しました」

蓮:「そして、彼の会社に接触する準備をしてくれ」

探偵(電話音声):「どのような?」

蓮:「買収も視野に入れている」

電話を切る蓮。

蓮:「君を諦めるなんて、できるわけがない。方法を変えるだけだ」



○蓮の自宅 深夜0時

壁一面に貼られた葵の写真。蓮はその前に立っている。

蓮:「君は僕を拒絶した。でも、それは君がまだ僕の愛を理解していないからだ」

新しい写真を貼る。今日撮られた葵の写真。

蓮:「時間をかけて、君に分からせる。僕なしでは、君は生きていけないことを」

デスクの引き出しから、葵のアパートの合鍵を取り出す。

蓮:「君の全てを、僕が管理する。それが愛だから」

窓の外には、満月が不気味に輝いている。