○病院 恵子の病室 朝9時

葵と蓮が恵子のベッドサイドにいる。

恵子:「昨日は本当にごめんなさい」

葵:「お母さんのせいじゃないよ」

恵子:「でも、せっかくの結婚式を...」

蓮:「お義母さんが無事で、それが一番です」

恵子:「蓮さん...優しいのね」

葵:「でしょ?私が選んだ人ですから」

恵子:「幸せになりなさい」

葵:「はい」



○病院 医師の診察室 昼12時

医師:「順調に回復しています。1週間で退院できるでしょう」

蓮:「ありがとうございます」

医師:「ただし、しばらくは安静が必要です」

葵:「わかりました」

医師:「ご結婚、おめでとうございます」

葵:「え?」

医師:「昨日、タキシードとウェディングドレスで来られたでしょう?」

蓮:「ああ...」

医師:「素敵なカップルですね」

葵:「ありがとうございます」



○ウェディングプランナー事務所 翌週土曜日

三度目の日程を決める二人。

プランナー:「大変でしたね」

葵:「はい...でも、母が無事で良かったです」

プランナー:「では、1ヶ月後でいかがですか?」

蓮:「どうかな?」

葵:「いいと思います」

プランナー:「では、この日で」

蓮:「今度こそ...」

葵:「三度目の正直ですね」

プランナー:「きっと大丈夫ですよ」



○カフェ 日曜日昼14時

美咲と会う葵。

美咲:「大変だったね」

葵:「うん...でも、お母さんが無事で良かった」

美咲:「神崎さん、本当にいい人だね」

葵:「うん」

美咲:「結婚式中止して、すぐ病院に来てくれたんでしょ?」

葵:「うん。迷わず来てくれた」

美咲:「以前の彼じゃ考えられないね」

葵:「本当に変わったんだ」

美咲:「良かった。心配してたけど、安心した」



○カフェ 昼14時30分

美咲:「ねえ、今どんな気持ち?」

葵:「え?」

美咲:「神崎さんへの」

葵:「...すごく愛してる」

美咲:「うん」

葵:「昨日、改めて思ったの」

美咲:「何を?」

葵:「この人と結婚できて、本当に良かったって」

美咲:「...」

葵:「どんな時も、そばにいてくれる」

美咲:「そうだね」

葵:「以前は執着だった。でも、今は本当の愛だって実感してる」



○神崎コーポレーション 社長室 月曜日昼12時

田中秘書と話す蓮。

田中秘書:「社長、今度こそですね」

蓮:「ああ。三度目の正直」

田中秘書:「今度は何も起こらないといいですね」

蓮:「もし何か起きても、乗り越える」

田中秘書:「...素晴らしい覚悟ですね」

蓮:「葵と一緒なら、何でも乗り越えられる」

田中秘書:「お幸せに」

蓮:「ありがとう」



○病院 1週間後

退院する恵子を迎えに来た葵と蓮。

恵子:「やっと退院できたわ」

葵:「お母さん、無理しないでね」

恵子:「大丈夫よ」

蓮:「しばらくは、僕の家に来てください」

恵子:「え?でも...」

蓮:「広い部屋があります。看護師も手配します」

葵:「蓮さん...」

蓮:「家族ですから」

恵子:「ありがとう...」



○蓮の自宅 ゲストルーム 夜20時

恵子が蓮の家で過ごしている。

恵子:「こんな立派なお家に...」

葵:「お母さん、ゆっくり休んでね」

恵子:「ありがとう」

蓮:「お義母さん、何か必要なものがあれば、いつでも言ってください」

恵子:「蓮さん、本当にありがとう」

蓮:「当然のことです」

恵子:「葵は...いい人を選んだわね」

葵:「でしょ?」

三人、笑い合う。


○蓮の自宅 ダイニング 翌朝

朝食を三人で取る。

蓮:「お義母さん、体調はどうですか?」

恵子:「おかげさまで、だいぶ良くなったわ」

葵:「良かった」

恵子:「二人を見ていると、幸せな気持ちになるわ」

蓮:「ありがとうございます」

恵子:「本当に、お似合いのカップルね」

葵:「お母さん...」

恵子:「来月の結婚式、楽しみにしてるわ」

蓮:「はい。今度こそ、必ず」



○蓮の自宅 リビング 夜22時

カレンダーを見る葵。

葵:「あと3週間...」

蓮:「今度こそだね」

葵:「はい」

蓮:「不安はない?」

葵:「全くありません」

蓮:「強いね」

葵:「だって、あなたがいるから」

蓮:「...ありがとう」

抱きしめ合う二人。

蓮:「絶対に幸せにする」

葵:「もう幸せです」



○ウェディングプランナー事務所 土曜日

最終確認。

プランナー:「全て準備できています」

葵:「ありがとうございます」

プランナー:「今度こそですね」

蓮:「はい」

プランナー:「お二人を見ていると、本当に愛し合っているのが分かります」

葵:「ありがとうございます」

プランナー:「素敵な式になりますよ」

蓮:「楽しみです」



○ブライダルサロン 日曜日

ウェディングドレスの最終試着。

葵:「今度こそ、これを着て式を挙げられる...」

スタッフ:「お似合いです」

葵:「ありがとうございます」

鏡に映る自分を見つめる。

葵:「(お父さん、見てる? 私、幸せになるよ)」

涙が溢れる。

スタッフ:「大丈夫ですか?」

葵:「はい...嬉しくて」



○蓮の自宅 リビング 夜21時

三人でテレビを見ている。

恵子:「もう来週ね」

葵:「はい」

恵子:「楽しみだわ」

蓮:「お義母さんも、体調は大丈夫ですか?」

恵子:「ええ、完璧よ」

葵:「良かった」

恵子:「あの日...事故に遭わなければ、もう結婚してたのにね」

葵:「でも、この期間も大切でした」

蓮:「そうだね」

葵:「より深く、お互いを知れたから」



○蓮の自宅 リビング 夜21時30分

恵子:「蓮さん、一つ聞いていい?」

蓮:「はい」

恵子:「以前...葵に執着していたって聞いたけど」

蓮:「...はい」

恵子:「今は?」

蓮:「今は...愛しています。執着じゃなく」

恵子:「その違いは?」

蓮:「執着は、自分のため。愛は、相手のため」

恵子:「...」

蓮:「以前は、葵を自分のものにしたかった」

葵:「...」

蓮:「でも今は、葵の幸せを願っている」

恵子:「素敵な答えね」

蓮:「治療を受けて、学びました」

恵子:「よく頑張ったわね」

蓮:「葵のおかげです」



○蓮の自宅 リビング 夜22時

恵子:「来週から、私たち家族ね」

葵:「はい」

恵子:「不思議ね。蓮さんとこうして過ごしていると、もう家族みたい」

蓮:「僕もそう感じています」

恵子:「葵のお父さんが生きていたら、きっと喜んだわ」

葵:「お父さん...」

恵子:「蓮さんを、気に入ったと思うわ」

蓮:「光栄です」

葵:「お父さん、見守っていてね」

三人、手を繋ぐ。



○蓮の自宅 リビング 結婚式前日夜20時

蓮:「明日だね」

葵:「はい」

恵子:「今度こそ、何も起きませんように」

蓮:「大丈夫です。何が起きても、乗り越えます」

葵:「そうですね」

恵子:「二人とも、強くなったわね」

蓮:「試練のおかげです」

葵:「全てに意味があったんですね」

恵子:「そうね」



○蓮の自宅 寝室 深夜0時

眠れない蓮。

蓮:「明日...ついに...」

母の写真を見る。

蓮:「母さん、明日結婚します」

蓮:「今度こそ」

蓮:「見守っていてください」



○蓮の自宅 ゲストルーム 深夜0時

葵も眠れずにいる。

葵:「明日...」

父の写真を見る。

葵:「お父さん、明日結婚式です」

葵:「今度こそ、ちゃんと式を挙げられる」

葵:「見守っていてね」



○蓮の自宅 リビング 朝5時

眠れず、リビングに出てきた蓮と葵。

二人、鉢合わせる。

蓮:「葵...眠れない?」

葵:「はい...蓮さんも?」

蓮:「うん」

並んでソファに座る。

葵:「緊張しますね」

蓮:「ああ」

葵:「でも、楽しみです」

蓮:「僕も」

葵:「今日、あなたの妻になります」

蓮:「今日、君の夫になる」

手を繋ぐ二人。


○蓮の自宅 リビング 朝6時

窓から朝日が昇ってくる。

蓮:「朝が来た」

葵:「はい」

蓮:「運命の日だ」

葵:「はい」

蓮:「準備はいい?」

葵:「完璧です」

蓮:「じゃあ、行こう」

葵:「はい」

立ち上がる二人。

蓮:「今日、必ず結婚しよう」

葵:「はい。必ず」

朝日に照らされる二人。

その姿は、希望に満ちている。