○葵のアパート 朝7時

目を覚ます葵。今日が結婚式の日。

葵:「ついに...この日が来た...」

窓を開けると、晴天。

葵:「お天気も祝福してくれてる」

美咲から電話がかかってくる。

美咲(電話音声):「おはよう! 今日だね!」

葵:「うん...緊張してきた」

美咲(電話音声):「大丈夫。すぐ行くから」

葵:「ありがとう」



○蓮の自宅 朝7時

蓮もすでに起きている。

蓮:「今日...葵と結婚する...」

母の写真に手を合わせる。

蓮:「母さん、行ってきます」

田中秘書から電話。

田中秘書(電話音声):「社長、準備は万端です」

蓮:「ありがとう。すぐ行く」

田中秘書(電話音声):「おめでとうございます」

蓮:「ありがとう」



○ホテル ブライズルーム 朝10時

ウェディングドレスに着替える葵。

美咲と佐々木が付き添っている。

美咲:「うわあ...綺麗...」

佐々木:「天使みたい」

葵:「恥ずかしい...」

美咲:「神崎さん、絶対感動するよ」

葵:「そうかな...」

ヘアメイクが仕上げをしている。

ヘアメイク:「完成です」

鏡を見る葵。

葵:「わあ...」

自分でも驚くほど美しい。



○ホテル 控え室 同時刻

タキシードに着替える蓮。

田中秘書が最終チェックをしている。

田中秘書:「完璧です」

蓮:「ありがとう」

田中秘書:「緊張していますか?」

蓮:「すごく。でも、楽しみだ」

田中秘書:「葵さんも待っていますよ」

蓮:「ああ。早く会いたい」


○ホテル チャペル 昼12時

続々と到着するゲストたち。

山田編集長、佐々木、会社の同僚たち。

神崎コーポレーションの社員たち。

そして、車椅子に乗った叔母・千代子も。

千代子:「来られて良かった...」

看護師:「無理しないでくださいね」

千代子:「大丈夫。蓮の晴れ舞台ですもの」



○ホテル外 駐車場 昼12時30分

葵の母・恵子が車で到着しようとしている。

その時、後ろから猛スピードで迫る車。

恵子:「!」

急ブレーキ。しかし間に合わず、追突される。

恵子:「きゃあ!」

衝撃で車が前に押し出される。




○ホテル ブライズルーム 昼12時40分

準備が整った葵。

美咲のスマートフォンに着信。

美咲:「もしもし...え!?今すぐ行きます!」

葵:「どうしたの?」

美咲:「葵...お母さんが事故に...」

葵:「え...?」

美咲:「駐車場で追突されたって」

葵:「お母さん!」

すぐに駆け出そうとする葵。

佐々木:「葵ちゃん、ドレス!」

葵:「関係ない!お母さんが!」


○ホテル 駐車場 昼12時45分

ウェディングドレス姿のまま、駆けつける葵。

車の中で気を失っている恵子。

葵:「お母さん! お母さん!」

すでに救急車が到着している。

救急隊員:「意識があります。すぐに病院へ」

葵:「私も行きます!」

救急隊員:「ご家族ですか?」

葵:「娘です!」

救急隊員:「では、一緒に」



○ホテル 控え室 昼12時50分

田中秘書が慌てて入ってくる。

田中秘書:「社長! 大変です!」

蓮:「どうした?」

田中秘書:「葵さんのお母様が事故に。葵さんは救急車で病院へ」

蓮:「!」

田中秘書:「結婚式は...」

蓮:「今すぐ病院へ行く」

田中秘書:「でも、ゲストが...」

蓮:「説明して。僕は葵のところへ行く」

すぐに駆け出す蓮。



○病院 救急外来 昼13時15分

ウェディングドレス姿のまま、待合室にいる葵。

涙を流している。

葵:「お母さん...」

そこへ、タキシード姿の蓮が駆けつける。

蓮:「葵!」

葵:「蓮さん...!」

蓮:「大丈夫?」

葵:「お母さんが...意識が戻らなくて...」

蓮、葵を抱きしめる。

蓮:「大丈夫。絶対に大丈夫だ」



○病院 診察室 昼14時

医師が出てくる。

医師:「ご家族の方?」

蓮:「はい」

医師:「頭を強く打たれています。今、検査中ですが...」

葵:「...」

医師:「場合によっては、手術が必要かもしれません」

葵:「そんな...」

蓮:「先生、助けてください。お願いします」

医師:「最善を尽くします」



○病院 待合室 昼15時

タキシードとウェディングドレスの二人が、並んで座っている。

葵:「ごめんなさい...結婚式...」

蓮:「謝らないで」

葵:「でも、みんな待ってるのに...」

蓮:「大丈夫。お義母さんの方が大事だ」

葵:「蓮さん...」

蓮:「君のお母さんは、僕の母親でもあるんだ」

葵:「...ありがとうございます」

手を握り合う二人。



○病院 手術室前 午後16時

手術が始まった。

葵:「お母さん...」

蓮:「大丈夫。お義母さんは強い人だ」

葵:「でも...」

蓮:「信じよう。一緒に」

葵:「はい...」

二人で手を合わせて祈る。

タキシードとウェディングドレスの二人が祈る姿は、まるで結婚式のよう。



○病院 待合室 午後17時

美咲、佐々木、山田編集長、田中秘書が駆けつける。

美咲:「葵!」

葵:「美咲...」

美咲:「大丈夫?」

葵:「まだ手術中...」

佐々木:「必ず大丈夫だから」

山田編集長:「我々も待っています」

田中秘書:「社長、ゲストの皆様には事情を説明しました」

蓮:「ありがとう」

みんなで恵子の無事を祈る。



○病院 手術室前 夜19時

医師が出てくる。

医師:「手術は成功しました」

葵:「!本当ですか!?」

医師:「はい。命に別状はありません」

葵:「お母さん...!」

崩れ落ちる葵。

蓮が支える。

蓮:「良かった...本当に良かった...」

葵:「ありがとうございます...」

みんな、安堵の表情。



○病院 病室 夜21時

意識を取り戻した恵子。

恵子:「葵...?」

葵:「お母さん!」

恵子:「私...事故を...」

葵:「大丈夫。もう大丈夫だから」

恵子:「結婚式は...?」

葵:「それより、お母さんが無事で良かった」

恵子:「ごめんね...」

蓮:「お義母さん、無事で本当に良かった」

恵子:「蓮さん...ごめんなさい...」

蓮:「謝らないでください。大切なのは、お義母さんが無事なことです」



○病院 病室 夜21時30分

恵子:「せっかくの結婚式なのに...」

葵:「いいの。お母さんが大事」

恵子:「でも...」

蓮:「お義母さん、また日を決めればいいんです」

恵子:「二人とも...」

葵:「今は、お母さんが元気になることだけ考えて」

恵子:「ありがとう...」

涙を流す恵子。

恵子:「蓮さん、葵をお願いね」

蓮:「はい。必ず幸せにします」



○病院 廊下 夜22時

二人で外に出る。

まだタキシードとウェディングドレス姿。

葵:「また...延期になっちゃった...」

蓮:「大丈夫」

葵:「二回も延期するなんて...」

蓮:「それだけ、運命が試してるんだよ」

葵:「え?」

蓮:「これだけの試練を乗り越えた愛なら、本物だって証明してるんだ」

葵:「蓮さん...」

蓮:「三度目の正直。次こそ、絶対に結婚しよう」

葵:「はい!」



○病院 屋上 夜23時

許可を得て、屋上に出る二人。

満月が輝いている。

蓮:「綺麗だね」

葵:「本当に」

蓮:「葵」

葵:「はい?」

蓮:「今日は式を挙げられなかったけど、一つだけいい?」

葵:「何ですか?」

蓮、膝をつく。

蓮:「改めて言わせて」

葵:「蓮さん...」

蓮:「愛してる。結婚しよう」

葵:「はい。愛してます」

月明かりの下、キスをする二人。

タキシードとウェディングドレスの姿で。

蓮:「これが、僕たちの結婚式だ」

葵:「はい」



○病院前 深夜0時

病院を出る二人。

葵:「次こそ、絶対に式を挙げましょう」

蓮:「ああ」

葵:「何があっても」

蓮:「何があっても」

葵:「約束ですよ」

蓮:「約束だ」

手を繋いで歩く二人。

タキシードとウェディングドレスの姿が、街の灯りに照らされている。

通りすがりの人々が、祝福の言葉をかける。

通行人:「おめでとうございます!」

蓮・葵:「ありがとうございます」

二人、笑顔で答える。