○ウェディングプランナー事務所 土曜日昼14時

最終準備を確認する二人。

プランナー:「今度こそ、大丈夫そうですね」

葵:「はい。万全です」

蓮:「叔母も元気になったし」

プランナー:「良かったですね。では、あと2週間です」

葵:「楽しみです」

蓮:「今度こそ、結婚できる」

幸せそうに手を繋ぐ二人。



○白川出版社 編集部 月曜日朝10時

山田編集長が葵を呼ぶ。

山田編集長:「葵くん、急な話だが」

葵:「はい」

山田編集長:「大物作家のインタビュー、行けるか?」

葵:「いつですか?」

山田編集長:「来週の土曜日」

葵:「! それは...結婚式の前日です」

山田編集長:「そうか...やはり無理か」

葵:「...」

山田編集長:「他の者に頼もう」

葵:「待ってください。誰のインタビューですか?」

山田編集長:「村上健吾だ」

葵:「!」



○白川出版社 給湯室 昼12時

佐々木に相談する葵。

佐々木:「村上健吾!?それはすごいチャンスだよ!」

葵:「でも、結婚式の前日...」

佐々木:「うーん...難しいね」

葵:「一生に一度のチャンスかもしれない」

佐々木:「でも、結婚式も一生に一度だよ」

葵:「そうだよね...」

佐々木:「神崎さんに相談してみたら?」

葵:「うん...」



○レストラン 夜19時

蓮に話す葵。

葵:「実は...」

事情を説明する。

蓮:「村上健吾...すごいね」

葵:「でも、前日だから...」

蓮:「...」

葵:「断るつもりです」

蓮:「待って」

葵:「え?」

蓮:「行った方がいいんじゃないか?」

葵:「でも...」

蓮:「キャリアのチャンスだろ?」

葵:「そうですけど、結婚式が...」

蓮:「前日だから、大丈夫だよ」



○レストラン 夜19時30分

葵:「本当にいいんですか?」

蓮:「ああ。君の夢を応援したい」

葵:「でも、準備が...」

蓮:「僕が全部やるよ」

葵:「そんな...」

蓮:「大丈夫。田中さんも手伝ってくれるし」

葵:「蓮さん...」

蓮:「以前の僕なら、絶対に反対した」

葵:「...」

蓮:「でも、今は違う。君を応援できる」

葵:「ありがとうございます」

蓮:「行っておいで。そして、いいインタビューをしてこい」



○蓮の自宅 1週間後

一人で結婚式の最終準備をする蓮。

田中秘書が手伝いに来ている。

田中秘書:「引き出物の確認、完了しました」

蓮:「ありがとう」

田中秘書:「席次表も問題ありません」

蓮:「助かる」

田中秘書:「社長、本当に変わりましたね」

蓮:「そうか?」

田中秘書:「以前なら、葵さんを絶対に行かせなかったでしょう」

蓮:「...ああ」



○蓮の自宅 深夜1時

一人になった蓮。

蓮:「明日、葵はインタビューだ...」

蓮:「前日なのに...大丈夫かな...」

不安が込み上げる。

蓮:「でも、信じるんだ...」

しかし、眠れない。

蓮:「電話したい...声が聞きたい...」

スマートフォンを手に取る。

蓮:「ダメだ...仕事に集中させないと...」

我慢する蓮。



○都内某所 土曜日昼14時

インタビューに臨む葵。順調に進んでいる。

葵:「(明日、結婚式だ...)」

葵:「(蓮さん、大丈夫かな...)」

インタビュー中も、蓮のことが気になる。

村上健吾:「大丈夫ですか?」

葵:「!すみません、集中します」



○インタビュー会場 夕方17時

インタビューが終わった後。

スタッフ:「葵さん、写真撮影もお願いできますか?」

葵:「え?聞いていませんが...」

スタッフ:「急遽、決まったんです」

葵:「どのくらいかかりますか?」

スタッフ:「2時間ほど...」

葵:「! でも、今日中に帰らないと...」

スタッフ:「お願いします。村上先生が要望されたんです」

葵:「...わかりました」


○蓮の自宅 夕方18時

葵の帰りを待つ蓮。

蓮:「もう18時か...」

蓮:「インタビュー、終わったかな...」

葵に電話をかける。

しかし、繋がらない。

蓮:「電源切ってるのか...仕事中だもんな...」

蓮:「大丈夫...信じよう...」



○インタビュー会場 夜20時

撮影が長引いている。

スタッフ:「すみません、あと1時間...」

葵:「でも...」

スマートフォンを見る。蓮からの着信履歴。

葵:「(蓮さん...心配してる...)」

葵:「すみません、少しだけ電話していいですか?」

スタッフ:「どうぞ」

葵、蓮に電話する。


○それぞれの場所 夜20時15分

蓮:「葵!」

葵(電話音声):「ごめんなさい。撮影が延びて...」

蓮:「大丈夫。無理してない?」

葵(電話音声):「大丈夫です。でも、帰りが遅くなりそう...」

蓮:「何時頃?」

葵(電話音声):「22時くらいかも...」

蓮:「そうか...気をつけて帰ってきてね」

葵(電話音声):「はい。明日、ちゃんと準備できますか?」

蓮:「もちろん。全部終わってるから」

葵(電話音声):「ありがとうございます...」

蓮:「待ってるよ」


○蓮の自宅 夜22時

まだ帰ってこない葵。

蓮:「22時過ぎてる...」

蓮:「何かあったのか...?」

不安で落ち着かない蓮。

蓮:「電話...いや、もう少し待とう...」

蓮:「信じるんだ...」

しかし、不安は増していく。

蓮:「もし事故にでも...」

悪い想像が膨らむ。



○葵のアパート前 夜23時

タクシーから降りる葵。疲れた様子。

アパートに入ろうとすると、蓮の車が止まっている。

葵:「蓮さん...?」

車から降りてくる蓮。

蓮:「葵!」

葵:「どうしてここに...?」

蓮:「心配で...連絡がなかったから...」

葵:「ごめんなさい。撮影が終わって、すぐ帰ってきたんですけど...」

蓮:「大丈夫だった?」

葵:「はい」



○葵のアパート前 夜23時15分

蓮:「ごめん...また心配しすぎた...」

葵:「いいえ」

蓮:「でも、信じようとしたんだ。君を」

葵:「わかってます」

蓮:「ただ...明日のことを考えると...」

葵:「不安でしたか?」

蓮:「ああ。もし何かあったらって」

葵:「蓮さん...」

蓮:「でも、これも愛だと思う」

葵:「え?」

蓮:「心配することは、悪いことじゃない。行動に移さなければ」

葵:「...そうですね」


○葵のアパート リビング 深夜0時

部屋に入った二人。

葵:「蓮さん、ごめんなさい」

蓮:「何が?」

葵:「私、仕事を優先しすぎました」

蓮:「いや、応援したのは僕だ」

葵:「でも、明日は私たちの大事な日なのに」

蓮:「...」

葵:「あなたを不安にさせてしまった」

蓮:「いや、僕が弱いだけだ」

葵:「違います」

蓮:「え?」

葵:「あなたは強くなりました。昔なら、絶対に行かせなかった」

蓮:「...」

葵:「でも、心配するのは当然です」



○葵のアパート リビング 深夜0時30分

蓮:「葵、正直に言うよ」

葵:「はい」

蓮:「今日、すごく不安だった」

葵:「...」

蓮:「でも、君を信じた。そして、我慢した」

葵:「ありがとうございます」

蓮:「これが、僕の成長だと思う」

葵:「はい」

蓮:「完璧じゃない。でも、コントロールできる」

葵:「それで十分です」

蓮:「ありがとう」

抱きしめ合う二人。

葵:「明日、結婚しましょう」

蓮:「ああ」



○蓮の自宅 深夜1時

一人になった蓮。

蓮:「明日...ついに...」

母の写真を見る。

蓮:「母さん、明日結婚します」

蓮:「葵という、素晴らしい人と」

蓮:「見守っていてください」

蓮:「僕は...幸せです」



○葵のアパート 深夜1時

ウェディングドレスを確認する葵。

葵:「明日、これを着る...」

葵:「蓮さんの妻になる...」

葵:「幸せだな...」

父の写真を見る。

葵:「お父さん、見ていてね」

葵:「私、幸せになります」


○それぞれの場所 朝5時

眠れない二人。

蓮:「もうすぐ夜が明ける...」

葵:「今日が...運命の日...」

蓮:「緊張する...」

葵:「私も...」

蓮:「でも、楽しみだ」

葵:「はい...」

朝日が昇り始める。

二人とも、窓の外を見ている。

蓮:「葵...」

葵:「蓮さん...」

蓮・葵:「今日、よろしくね」

まるで心が繋がっているかのように、同じことを思う二人。