○ウェディングプランナー事務所 土曜日昼14時

最終確認をする二人。

プランナー:「準備は全て整いました」

葵:「ありがとうございます」

プランナー:「あとは当日を迎えるだけですね」

蓮:「楽しみです」

プランナー:「お二人とも、本当に幸せそうですね」

葵:「はい」

蓮:「彼女のおかげです」

葵:「私もです」

手を繋ぐ二人。



○カフェ 日曜日昼13時

美咲と会う葵。

美咲:「もうすぐだね」

葵:「うん。あと1ヶ月」

美咲:「緊張してる?」

葵:「全然。むしろ早く結婚したい」

美咲:「本当に幸せそうだね」

葵:「幸せだよ」

美咲:「神崎さん、本当に変わったんだね」

葵:「うん。全然違う人みたい」

美咲:「良かった...」



○カフェ 昼13時30分

美咲:「ねえ、一つだけ聞いていい?」

葵:「何?」

美咲:「なんで神崎さんを選んだの?」

葵:「え?」

美咲:「隼人さんの方が、最初から優しかったじゃん」

葵:「...」

美咲:「神崎さんは、あんなに怖いことしたのに」

葵:「それはね...」

葵、少し考える。

葵:「だからこそ、かな」

美咲:「?」



○カフェ 昼14時

葵:「蓮さんは、間違った方法だったけど、本気で愛してくれた」

美咲:「...」

葵:「狂気的なまでに。人生をかけて」

美咲:「でも、それって...」

葵:「病気だった。わかってる」

美咲:「...」

葵:「でも、その根底にあったのは、純粋な愛だったの」

美咲:「純粋な...愛?」

葵:「うん。歪んでいたけど、嘘じゃなかった」

美咲:「...そうなんだ」

葵:「そして、変わろうとした。私のために」



○カフェ 昼14時15分

美咲:「隼人さんは?」

葵:「隼人さんは優しかった。紳士的だった」

美咲:「うん」

葵:「でも...」

美咲:「でも?」

葵:「心が動かなかったの」

美咲:「...」

葵:「安心できるけど、ドキドキしなかった」

美咲:「なるほど...」

葵:「蓮さんといると、怖かったり、不安だったり、でもすごくドキドキした」

美咲:「それって...」

葵:「本気で愛されてるって感じられたから」



○カフェ 昼14時30分

美咲:「でも、リスクあったよね」

葵:「うん。また執着されるかもって」

美咲:「それでも?」

葵:「賭けてみたかった」

美咲:「賭け?」

葵:「彼が本当に変われるか」

美咲:「...」

葵:「そして、変われた」

美咲:「うん」

葵:「だから、選んで良かったって思う」

美咲:「そっか...」

葵:「心配かけてごめんね」

美咲:「ううん。幸せそうだから、良かった」



○神崎コーポレーション 社長室 月曜日昼12時

田中秘書と話す蓮。

田中秘書:「社長、一つ聞いていいですか?」

蓮:「何だ?」

田中秘書:「なぜ葵さんは、社長を選んだと思いますか?」

蓮:「...わからない」

田中秘書:「え?」

蓮:「本当に。僕はあんなに彼女を苦しめたのに」

田中秘書:「...」

蓮:「隼人の方が、ずっと良い男だった」

田中秘書:「でも、葵さんは社長を選びました」

蓮:「不思議だ...」



○蓮の自宅 夜20時

葵と一緒にいる蓮。

蓮:「葵、一つ聞いていい?」

葵:「何ですか?」

蓮:「なんで、僕を選んでくれたの?」

葵:「え?」

蓮:「隼人の方が、ずっといい男だったのに」

葵:「...」

蓮:「僕は君を苦しめた。監視して、束縛して」

葵:「...」

蓮:「なのに、なぜ?」

葵、真剣な表情で蓮を見る。



○蓮の自宅 リビング 夜20時15分

葵:「本気だったから」

蓮:「本気?」

葵:「あなたの愛が、本気だったから」

蓮:「...」

葵:「間違った方法だったけど、嘘じゃなかった」

蓮:「でも...」

葵:「隼人さんは優しかった。でも、心が動かなかった」

蓮:「...」

葵:「あなたといると、怖かった。でも、ドキドキした」

蓮:「葵...」

葵:「本気で愛されてるって、感じられたから」



○蓮の自宅 リビング 夜20時30分

蓮:「でも、あんなに苦しめたのに...」

涙を流す蓮。

葵:「苦しかった。でも、嫌いになれなかった」

蓮:「なぜ...」

葵:「あなたが変わろうとしたから」

蓮:「...」

葵:「間違いに気づいて、治療を受けて、変わろうと努力した」

蓮:「それでも...」

葵:「その姿が、愛おしかった」

蓮、葵を抱きしめる。

蓮:「ありがとう...選んでくれて...」

葵:「こちらこそ」



○蓮の自宅 リビング 夜21時

ソファに座る二人。

蓮:「思えば、色々あったね」

葵:「本当に」

蓮:「最初に君を助けた夜」

葵:「『君は僕のものだ』って言われて、びっくりしました」

蓮:「恥ずかしいな...」

葵:「でも、今思えば、あれが始まりだったんですね」

蓮:「ああ」

葵:「監視されて、怖かった」

蓮:「本当にごめん」

葵:「でも、今は笑い話です」

蓮:「そうか...」



○蓮の自宅 リビング 夜21時30分

葵:「蓮さん、今は監視したいって思います?」

蓮:「...たまに」

葵:「正直ですね」

蓮:「でも、我慢できる」

葵:「それが成長ですね」

蓮:「ああ。完璧じゃないけど、コントロールできるようになった」

葵:「完璧じゃなくていいんです」

蓮:「ありがとう」

葵:「私も完璧じゃないですから」

蓮:「君は十分完璧だよ」

葵:「いえいえ」

笑い合う二人。



○母の墓 翌週土曜日

二人で墓参りに来ている。

蓮:「母さん、もうすぐ結婚式だよ」

葵:「...」

蓮:「葵が、僕を選んでくれた理由がわかった」

葵:「...」

蓮:「本気で愛したから、だって」

葵:「お母様、息子さんは素敵な方です」

蓮:「母さん、僕は幸せだよ」

葵:「私も幸せにします」

蓮:「見守っていてくれ」

風が吹く。

蓮:「母さんも、祝福してくれてるみたいだ」

葵:「はい」



○居酒屋 夜19時

葵が美咲と佐々木を招いている。

佐々木:「もうすぐだね!」

葵:「はい」

美咲:「ドレス、綺麗だった?」

葵:「すごく綺麗でした」

佐々木:「見たいな〜」

葵:「当日のお楽しみです」

美咲:「葵、本当に幸せそうだね」

葵:「幸せです」

佐々木:「神崎社長、いい人なんだね」

葵:「はい。最高の人です」



○神崎コーポレーション 社長室 同時刻

田中秘書と話す蓮。

蓮:「田中さん、ありがとう」

田中秘書:「何がですか?」

蓮:「ずっと支えてくれて」

田中秘書:「当然です」

蓮:「君がいなかったら、ここまで来られなかった」

田中秘書:「そんなことありません」

蓮:「いや、本当だ」

田中秘書:「...光栄です」

蓮:「これからも、よろしく頼む」

田中秘書:「もちろんです」



○蓮の自宅 深夜1時

眠れない蓮。

蓮:「本当に...僕でいいのかな...」

蓮:「幸せにできるかな...」

不安が込み上げる。

しかし、深呼吸して落ち着く。

蓮:「大丈夫。葵が選んでくれたんだ」

蓮:「信じよう。自分を」

ベッドに入る蓮。

蓮:「もうすぐ、夫婦になる...」



○葵のアパート 同時刻

葵も眠れないでいる。

葵:「いよいよだ...」

葵:「蓮さんの妻になる...」

少しの不安と、大きな期待。

葵:「大丈夫。彼を信じてる」

葵:「幸せにしてみせる」

スマートフォンで蓮の写真を見る。

葵:「愛してる...」



○レストラン 夜19時

二人でディナー。

蓮:「あと3週間だね」

葵:「はい」

蓮:「不安はない?」

葵:「全くありません」

蓮:「強いね」

葵:「あなたを信じてますから」

蓮:「ありがとう」

葵:「私を信じてください」

蓮:「もちろん」

グラスを合わせる二人。

蓮・葵:「乾杯」



○温泉旅館 週末

結婚式前の小旅行。

葵:「温泉、気持ちいいですね」

蓮:「ああ」

葵:「これから、こんな旅行たくさんしたいですね」

蓮:「どこに行きたい?」

葵:「どこでも。あなたと一緒なら」

蓮:「僕もだ」

葵:「子供ができたら、三人で」

蓮:「いいね」

葵:「何人ほしいですか?」

蓮:「二人くらい?」

葵:「私も!」

未来を語る二人。



○葵のアパート 結婚式2週間前 夜22時

カレンダーを見る葵。

葵:「あと2週間...」

結婚式の日に丸がついている。

葵:「早く来ないかな...」

ベッドに横になる。

葵:「幸せだな...」

葵:「蓮さん、待っててね」

葵:「最高の花嫁になるから」

笑顔で眠りにつく葵。