○ウェディングプランナー事務所 土曜日昼14時

順調に進む結婚式の準備。

プランナー:「ドレス、決まりましたね」

葵:「はい。シンプルで気に入りました」

蓮:「とても似合ってた」

プランナー:「招待状も発送しましたので、後は当日を待つだけですね」

葵:「ありがとうございます」

蓮:「楽しみだね」

葵:「はい」

幸せそうに手を繋ぐ二人。



○白川出版社 編集長室 月曜日朝10時

山田編集長が葵を呼ぶ。

山田編集長:「葵くん、大きなチャンスだ」

葵:「何ですか?」

山田編集長:「パリの出版社との共同プロジェクト」

葵:「パリ...!」

山田編集長:「君に担当してほしい」

葵:「光栄です」

山田編集長:「ただし...条件がある」

葵:「何でしょう?」

山田編集長:「1ヶ月間、パリに駐在してもらう」

葵:「え...」

山田編集長:「結婚式の前だが...大丈夫か?」



○白川出版社 編集部 昼12時

佐々木に相談する葵。

佐々木:「パリ! すごいじゃん!」

葵:「でも、結婚式まで2ヶ月なのに...」

佐々木:「キャリアのチャンスだよ?」

葵:「わかってるけど...蓮さんに相談しないと」

佐々木:「そりゃそうだね」

葵:「1ヶ月も離れるの、初めてだから」

佐々木:「大丈夫だよ。もう健全な関係なんでしょ?」

葵:「そうだけど...」



○レストラン 夜19時

蓮に話す葵。

葵:「実は...仕事で、パリに1ヶ月行くことになりそうで」

蓮:「パリ?」

葵:「大きなプロジェクトなんです」

蓮:「...そうか」

葵:「でも、結婚式の前だし...断ろうかと」

蓮:「!」

葵:「え?」

蓮:「ダメだ。そんなの」

葵:「でも...」

蓮:「チャンスなんだろ? 行くべきだ」

葵:「でも、1ヶ月も離れて...」

蓮:「大丈夫。僕は平気だ」



○レストラン 夜19時30分

葵:「本当に大丈夫ですか?」

蓮:「ああ。むしろ、君の夢を応援したい」

葵:「蓮さん...」

蓮:「以前の僕なら、絶対に反対した」

葵:「...」

蓮:「でも、今は違う。君を信じてる」

葵:「ありがとうございます」

蓮:「それに、1ヶ月なんてすぐだよ」

葵:「そうですね」

蓮:「毎日ビデオ通話すればいい」

葵:「はい!」

蓮:「行っておいで。そして、成功させてこい」



○空港 2週間後

見送りに来た蓮。

葵:「じゃあ、行ってきます」

蓮:「気をつけて」

葵:「毎日連絡します」

蓮:「無理しなくていい。仕事に集中して」

葵:「でも...」

蓮:「大丈夫。君を信じてるから」

抱きしめる二人。

蓮:「愛してる」

葵:「私も愛してます」

蓮:「行っておいで」

葵、搭乗ゲートへ向かう。

何度も振り返る葵。蓮が手を振っている。



○蓮の自宅 夜22時(日本時間)

一人の部屋。広く感じる。

蓮:「静かだな...」

葵からビデオ通話がかかる。

蓮:「葵!」

葵(画面越し):「着きました!」

蓮:「良かった。疲れてない?」

葵(画面越し):「少し。でも大丈夫です」

蓮:「無理するなよ」

葵(画面越し):「はい。蓮さんは?」

蓮:「僕も大丈夫」

しかし、表情は少し寂しげ。



○神崎コーポレーション 社長室 昼12時

田中秘書が様子を見に来る。

田中秘書:「社長、葵さんとは?」

蓮:「毎日ビデオ通話してる」

田中秘書:「順調ですね」

蓮:「ああ。彼女、すごく楽しそうだ」

田中秘書:「それは良かった」

蓮:「でも...」

田中秘書:「寂しいですか?」

蓮:「...ああ。すごく」

田中秘書:「でも、我慢できている」

蓮:「何とかね」



○パリ 出版社オフィス 同時刻(パリ時間朝5時)

プロジェクトで活躍する葵。

フランス人同僚:「葵、素晴らしいアイデアだ!」

葵:「ありがとうございます」

上司:「君のおかげで、プロジェクトが前進している」

葵:「光栄です」

充実した表情の葵。

夜、ホテルで蓮にビデオ通話。

葵(画面越し):「今日もいい仕事ができました!」

蓮:「良かったね」

葵(画面越し):「蓮さんのおかげです。応援してくれて」

蓮:「君の実力だよ」



○蓮の自宅 深夜2時

眠れない蓮。

蓮:「会いたい...」

スマートフォンを見る。葵の写真。

蓮:「今、何してるんだろう...」

時差を考える。

蓮:「向こうは夕方か...」

電話したい衝動。しかし、我慢する。

蓮:「仕事中かもしれない。邪魔しちゃダメだ」

蓮:「信じるんだ...」



○パリ カフェ 同時刻(パリ時間夕方18時)

同僚たちとお茶をしている葵。

ふと、スマートフォンを見る。蓮からの連絡はない。

葵:「(あれ? 今日は連絡ないな...)」

フランス人同僚:「葵、大丈夫?」

葵:「はい、すみません」

葵:「(もしかして...我慢してる?)」

蓮に電話をかける。


○蓮の自宅 深夜2時30分

葵から電話がかかってくる。

蓮:「葵?どうした?」

葵(電話音声):「大丈夫ですか?」

蓮:「ああ、大丈夫だけど...」

葵(電話音声):「嘘。寂しいんですよね?」

蓮:「...わかる?」

葵(電話音声):「わかります。恋人ですから」

蓮:「ごめん。心配かけて」

葵(電話音声):「謝らないでください。私も寂しいです」

蓮:「葵...」

葵(電話音声):「でも、あと2週間。頑張りましょう」

蓮:「うん」



○パリ 葵のホテル 3週間後

プロジェクトが無事完了。

葵がホテルの部屋でくつろいでいると、ノック。

葵:「はい?」

ドアを開けると...蓮が立っている。

葵:「!蓮さん!?」

蓮:「会いに来た」

葵:「どうして...!」

蓮:「我慢できなくて」

抱きしめる二人。

葵:「嬉しい...」

蓮:「プロジェクト終わったんだろ?残り1週間、一緒にいようと思って」

葵:「ありがとうございます!」



○パリ エッフェル塔前 夕方18時

手を繋いで歩く二人。

葵:「パリ、初めてですか?」

蓮:「いや、仕事で何度か。でも、こんなに楽しいのは初めて」

葵:「私も」

蓮:「君といると、どこでも天国だ」

葵:「蓮さん...」

エッフェル塔の前でキスをする二人。

蓮:「ここでプロポーズすればよかったかな」

葵:「いえ、日本で良かったです」

蓮:「そう?」

葵:「私たちらしいから」



○パリ カフェ 夜20時

蓮:「プロジェクト、成功したんだって?」

葵:「はい。上司にも褒められました」

蓮:「すごいね」

葵:「蓮さんが応援してくれたから」

蓮:「君の実力だよ」

葵:「でも、最初は迷ったんです」

蓮:「来ること?」

葵:「はい。あなたと離れるのが怖くて」

蓮:「でも、来て正解だったね」

葵:「はい。成長できました」

蓮:「僕も成長できた」

葵:「え?」

蓮:「君がいなくても、大丈夫だって」



○パリ カフェ 夜20時30分

葵:「大丈夫だった...?」

蓮:「正直、つらかった。寂しかった」

葵:「...」

蓮:「でも、我慢できた。それが嬉しかった」

葵:「蓮さん...」

蓮:「以前なら、絶対に行かせなかった。監視してた」

葵:「でも、今は違う」

蓮:「ああ。君を信じられる。君がいなくても、自分でいられる」

葵:「それって...」

蓮:「依存じゃなくて、愛だって実感できた」

涙ぐむ葵。

葵:「良かった...本当に良かった...」


○パリ セーヌ川沿い 夜22時

夜景を見ながら歩く二人。

蓮:「葵、ありがとう」

葵:「何が?」

蓮:「僕を変えてくれて」

葵:「私は何も...」

蓮:「いや、君がいたから変われた」

葵:「...」

蓮:「君と出会えて、本当に良かった」

葵:「私もです」

蓮:「これから、もっと幸せにする」

葵:「もう十分幸せです」

蓮:「いや、まだまだ」

二人、笑い合う。



○パリ空港 1週間後

帰国する二人。

葵:「楽しかったですね」

蓮:「ああ。新婚旅行みたいだった」

葵:「本当の新婚旅行も、ここに来ましょうか?」

蓮:「いいね」

葵:「結婚式まで、あと1ヶ月」

蓮:「あっという間だね」

葵:「楽しみです」

蓮:「僕も」

手を繋ぎ、搭乗ゲートへ向かう二人。



○白川出版社 編集長室 翌日

山田編集長:「おかえり、葵くん。プロジェクト、大成功だったそうだな」

葵:「はい。貴重な経験になりました」

山田編集長:「先方からも高評価だ」

葵:「ありがとうございます」

山田編集長:「結婚しても、ここで働いてくれるよな?」

葵:「もちろんです」

山田編集長:「良かった。これからも期待してる」



○蓮の自宅 夜21時

帰国後、一緒にいる二人。

蓮:「いよいよだね」

葵:「はい」

蓮:「不安はない?」

葵:「全くありません」

蓮:「僕も」

葵:「あなたとなら、どんな未来も怖くない」

蓮:「僕もだ」

抱きしめ合う二人。

蓮:「あと1ヶ月で、夫婦になる」

葵:「はい。楽しみです」

蓮:「幸せにする。必ず」

葵:「もう幸せです」

蓮:「これからもっと」

キスをする二人。