○心療内科 カウンセリングルーム 2週間後

蓮とカウンセラーの最終セッション。

カウンセラー:「神崎さん、あなたは大きく成長しました」

蓮:「ありがとうございます」

カウンセラー:「最初にここに来た時とは、別人のようです」

蓮:「そうですか?」

カウンセラー:「ええ。もう、定期的なカウンセリングは必要ないでしょう」

蓮:「!」

カウンセラー:「ただし、何かあった時はいつでも来てください」

蓮:「はい...」

カウンセラー:「不安ですか?」

蓮:「少し。カウンセリングが支えでしたから」



○心療内科 カウンセリングルーム 同時刻

カウンセラー:「でも、今はもっと大きな支えがありますね」

蓮:「葵のことですか」

カウンセラー:「はい。健全な関係を築いています」

蓮:「彼女のおかげです」

カウンセラー:「いいえ、あなたの努力です。葵さんはサポートしただけ」

蓮:「...ありがとうございます」

カウンセラー:「最後に、一つだけ」

蓮:「はい」

カウンセラー:「あなたは、もう自分を許していいんです」

蓮:「自分を...?」

カウンセラー:「母親の死も、葵さんを苦しめたことも。全て許して、前に進んでください」



○レストラン 夜19時

蓮が葵に報告する。

蓮:「カウンセリング、卒業だって」

葵:「本当ですか!?すごい!」

蓮:「でも、少し不安で」

葵:「大丈夫です。私がいますから」

蓮:「ありがとう」

葵:「それに、必要な時はまた行けばいいんですよね?」

蓮:「ああ、そう言われた」

葵:「じゃあ、安心ですね」

蓮:「そうだね」

葵:「これからは、二人で乗り越えていきましょう」

蓮:「...うん」


○神崎コーポレーション 社長室 翌日

田中秘書と話す蓮。

蓮:「田中さん、相談がある」

田中秘書:「何でしょうか?」

蓮:「プロポーズしようと思う」

田中秘書:「 !ついにですか!」

蓮:「ああ。カウンセリングも卒業したし、もう大丈夫だと思う」

田中秘書:「素晴らしいです」

蓮:「どうすればいいかな?アドバイスがほしい」

田中秘書:「そうですね...葵さんはどんな女性ですか?」

蓮:「シンプルで誠実。派手なことは好まない」

田中秘書:「では、シンプルで心のこもった方法がいいですね」


○宝石店 土曜日昼14時

一人で指輪を見る蓮。

店員:「お探しですか?」

蓮:「婚約指輪を」

店員:「おめでとうございます。どのようなデザインがお好みですか?」

蓮:「シンプルで、でも品のあるもの」

店員:「かしこまりました」

いくつか提案される。

蓮:「これがいい」

シンプルなプラチナのリング。中央に小さなダイヤモンド。

店員:「素敵な選択です」

蓮:「これなら、彼女に似合う」



○蓮の自宅 夜22時

指輪を見つめる蓮。

蓮:「いつプロポーズしようか...」

蓮:「どこで? どんな言葉で?」

考え込む蓮。

蓮:「彼女らしい場所...彼女らしい方法...」

母の写真を見る。

蓮:「母さん、見守っていてくれ」



○公園 日曜日午後14時

二人で散歩している。初めて再会した場所。

葵:「ここ、懐かしいですね」

蓮:「ああ。4ヶ月ぶりに会った場所」

葵:「あの時は緊張しました」

蓮:「僕も。君に嫌われてるんじゃないかって」

葵:「そんなことないです」

ベンチに座る二人。

蓮:「葵...」

葵:「はい?」

蓮、緊張している。しかし、まだ言葉が出ない。

蓮:「...いや、なんでもない」



○カフェ 午後16時

葵:「蓮さん、今日何か変ですよ?」

蓮:「え?そんなことないけど」

葵:「落ち着かない感じ」

蓮:「...わかる?」

葵:「もちろん。恋人ですから」

蓮:「そうだね」

葵:「何かあったんですか?」

蓮:「いや...まだ話せない」

葵:「?」

蓮:「でも、近いうちに」

葵:「わかりました。待ってます」



○美咲のアパート 夜20時

葵が美咲に相談している。

葵:「最近、蓮さんが何か隠してる感じなの」

美咲:「また監視とか?」

葵:「違う。そういう感じじゃなくて...」

美咲:「じゃあ何?」

葵:「わからない。でも、悪いことじゃない気がする」

美咲:「もしかして...プロポーズとか?」

葵:「え!?」

美咲:「だって、カウンセリングも卒業したんでしょ?」

葵:「でも、まだ早いんじゃ...」

美咲:「葵はどうなの?結婚したい?」

葵:「...したい」

美咲:「なら、大丈夫じゃん」



○蓮の自宅 翌日夜21時

田中秘書に電話する蓮。

蓮:「明日、決行する」

田中秘書(電話音声):「いよいよですね」

蓮:「緊張する...」

田中秘書(電話音声):「大丈夫です。あなたなら」

蓮:「ありがとう」

田中秘書(電話音声):「幸せになってください」

蓮:「ああ」

電話を切り、指輪の箱を見る蓮。

蓮:「明日...人生が変わる...」



○レストラン 翌日夜19時

蓮が予約した高級レストラン。個室。

葵:「今日は特別ですね。こんな素敵なお店」

蓮:「うん。特別な日だから」

葵:「特別な日?」

蓮:「後で分かる」

食事を楽しむ二人。しかし、蓮は明らかに緊張している。

葵:「蓮さん、大丈夫ですか? 顔色が...」

蓮:「大丈夫。ただ...緊張してる」

葵:「何に?」

蓮:「これから言うことに」



○レストラン個室 夜20時30分

デザートが運ばれた後。

蓮、立ち上がる。

葵:「蓮さん?」

蓮、膝をつく。

葵:「!」

ポケットから指輪の箱を取り出す。

蓮:「葵...」

葵:「蓮さん...」

蓮:「君と出会って、僕の人生は変わった」

葵:「...」

蓮:「最初は間違った愛だった。君を苦しめた」

葵:「...」

蓮:「でも、君は僕を見捨てなかった。待っていてくれた」

涙ぐむ蓮。

蓮:「そして、僕は変われた。本当の愛を知った」

葵:「蓮さん...」

蓮:「これからは、君を幸せにしたい。一生をかけて」

箱を開ける。シンプルで美しい指輪。

蓮:「結婚してください」


○レストラン個室 夜20時35分

葵、涙が溢れる。

葵:「はい...」

蓮:「本当に?」

葵:「はい! 喜んで!」

蓮、葵の指に指輪をはめる。

蓮:「ありがとう...」

二人、抱き合う。

蓮:「幸せにする。必ず」

葵:「私も、あなたを幸せにします」

蓮:「一緒に幸せになろう」

葵:「はい」

キスをする二人。

レストランのスタッフが拍手する。



○レストランを出て 夜22時

手を繋いで歩く二人。葵が指輪を見つめている。

葵:「綺麗...」

蓮:「君に似合うように選んだ」

葵:「ありがとうございます」

蓮:「明日、両親に挨拶に行きたい」

葵:「はい。お母様には?」

蓮:「うん。お墓参りに行こう」

葵:「はい」

蓮:「それから、君のお母さんにも」

葵:「喜ぶと思います」



○墓地 翌日昼14時

蓮の母の墓前。二人で手を合わせる。

蓮:「母さん、報告に来た」

葵:「...」

蓮:「僕、結婚することになった」

葵:「初めまして...葵と申します」

蓮:「この人が、僕を変えてくれた人」

葵:「未熟者ですが、蓮さんを幸せにします」

蓮:「母さん、見守っていてくれ」

風が吹く。まるで母が祝福しているよう。

蓮:「ありがとう、母さん」



○葵の実家 夕方17時

葵の母・恵子(50代)が出迎える。

恵子:「いらっしゃい」

葵:「ただいま、お母さん」

蓮:「初めまして、神崎蓮と申します」

恵子:「ああ、あなたが...」

少し警戒している様子の恵子。

蓮:「色々とご心配をおかけしました」

恵子:「...」

葵:「お母さん、彼と結婚します」

恵子:「!」



○葵の実家 リビング 夕方17時30分

お茶を飲みながら。

恵子:「神崎さん、葵を幸せにしてくれますか?」

蓮:「はい。命をかけて」

恵子:「以前の...あの件は?」

蓮:「治療を受けました。もう大丈夫です」

恵子:「本当に?」

蓮:「カウンセラーも、治ったと言ってくれました」

恵子:「...」

葵:「お母さん、私が選んだ人です。信じて」

恵子:「葵...」

蓮:「お義母さん、僕は過去に間違いを犯しました」

恵子:「...」

蓮:「でも、変わりました。葵さんのおかげで」

恵子:「...わかりました」



○葵の実家 リビング 夕方18時

恵子:「神崎さん、一つだけ約束してください」

蓮:「何でしょうか?」

恵子:「葵を泣かせないでください」

蓮:「...はい」

恵子:「葵は強い子ですが、本当は寂しがりやなんです」

葵:「お母さん...」

恵子:「だから、そばにいてあげてください」

蓮:「必ず」

恵子:「では...結婚を許します」

葵:「お母さん!」

恵子:「幸せになりなさい」

葵:「ありがとう!」

母と娘、抱き合う。

蓮、その光景を見て涙ぐむ。



○車内 夜20時

葵:「お母さん、許してくれましたね」

蓮:「ああ。良かった」

葵:「蓮さんの言葉、心に響きました」

蓮:「本心だから」

葵:「わかってます」

蓮:「これから、準備だね」

葵:「はい。結婚式の」

蓮:「どんな式がいい?」

葵:「シンプルで、温かい式」

蓮:「僕もそれがいい」

葵:「じゃあ、一緒に考えましょう」

蓮:「うん」



○蓮の自宅 夜22時

二人でソファに座っている。

蓮:「信じられない...君と結婚できるなんて」

葵:「私も」

蓮:「1年前は、こんな未来想像できなかった」

葵:「私もです。怖くて、逃げてばかりでした」

蓮:「でも、君は待っていてくれた」

葵:「あなたが変わろうとしていたから」

蓮:「これからは、もっといい男になる」

葵:「今でも十分です」

蓮:「ありがとう」

二人、抱き合う。

蓮:「愛してる」

葵:「私も愛してます」

窓の外には、満月が輝いている。