○レストラン 夜19時 1週間後

デートを重ねる二人。今日は記念日、再会から1ヶ月。

蓮:「この1ヶ月、夢みたいだった」

葵:「私も」

蓮:「君と一緒にいて、執着を感じない。ただ幸せだ」

葵:「それが本当の愛ですね」

蓮:「そうだね」

手を繋ぐ二人。自然な笑顔。



○蓮の自宅 夜23時

帰宅後、ベッドで横になる蓮。

蓮:「今日も楽しかった...でも...」

スマートフォンを手に取る。葵に電話したい衝動。

蓮:「無事に帰ったかな...確認したい...」

深呼吸する。

蓮:「ダメだ。信じるんだ。彼女を」

スマートフォンを置く。しかし不安は消えない。



○葵のアパート周辺 翌日夜21時

会社の飲み会で遅くなった葵。酔っている様子。

駅から自宅まで、ふらふら歩いている。

スマートフォンを見ると、蓮から着信履歴。3回。

葵:「あ...電話してたんだ...」

電話をかけ直す。



○蓮の自宅 夜21時15分

葵から電話がかかってくる。

蓮:「葵! 大丈夫?」

葵(電話音声):「ごめんなさい...飲み会で...」

蓮:「飲み会?」

葵(電話音声):「会社の...今、帰ってるところ」

蓮:「一人で? 酔ってるの?」

葵(電話音声):「ちょっとだけ...」

蓮:「危ない!今どこ?」


○駅前 夜21時30分

車で駆けつける蓮。葵を見つける。

蓮:「葵!」

葵:「蓮さん...ごめんなさい」

蓮:「謝らなくていい。車に乗って」

葵を車に乗せる蓮。

車内で、葵が眠そうにしている。

蓮:「誰と飲んでいたの?」

葵:「会社の人たち...」

蓮:「男性も?」

葵:「うん...」

蓮の表情が少し曇る。


○蓮の車内 夜21時45分

蓮:「どんな人たちだった?」

葵:「普通の同僚...」

蓮:「男性とは...仲がいいの?」

葵:「普通ですよ...」

蓮:「普通...」

自分の中に湧き上がる嫉妬を感じる蓮。

蓮:「(やめろ...これは執着だ...)」

深呼吸する。



○葵のアパート前 夜22時

蓮:「着いたよ」

葵:「ありがとうございます...」

蓮:「部屋まで送る」

葵:「大丈夫です」

蓮:「でも...」

葵:「蓮さん、私を信じて」

蓮、はっとする。

蓮:「...ごめん。そうだね」

葵:「おやすみなさい」

葵、アパートに入る。

蓮、車の中で一人。

蓮:「僕は...また...」



○蓮の自宅 深夜1時

ベッドで寝返りを打つ蓮。眠れない。

蓮:「葵は無事か...部屋にちゃんと入れたか...」

蓮:「男性社員と...仲がいいのか...」

蓮:「やめろ! 考えるな!」

起き上がり、水を飲む。

蓮:「カウンセラーに相談しないと...」




○心療内科 カウンセリングルーム 翌日午前

カウンセラー:「嫉妬を感じたんですね」

蓮:「はい...彼女が他の男性と飲んでいると聞いて...」

カウンセラー:「それは自然な感情です」

蓮:「でも、確認したくなった。部屋に入ったか、無事か...」

カウンセラー:「でも、我慢した?」

蓮:「はい。でも...苦しかった」

カウンセラー:「それでいいんです。感情を持つことは悪くない。行動に移さないことが大事」

蓮:「でも...これは再発では?」

カウンセラー:「いいえ。嫉妬は誰でも感じます。問題は、それをどうコントロールするか」



○カフェ 午後15時

葵と会う蓮。

蓮:「昨日のこと...ごめん」

葵:「え?」

蓮:「嫉妬してしまった。君が他の男性と飲んでいると聞いて」

葵:「...」

蓮:「でも、行動には移さなかった。確認もしなかった」

葵:「蓮さん...」

蓮:「ただ、正直に伝えたくて。僕はまだ完璧じゃない」

葵:「完璧じゃなくていいんです」

蓮:「でも...」

葵:「誰だって嫉妬はします。大事なのは、それを相手にぶつけないこと」

蓮:「そうか...」



○カフェ 午後15時30分

葵:「蓮さん、私も告白があります」

蓮:「何?」

葵:「実は...昨日、男性社員から告白されました」

蓮:「!」

一瞬、動揺する蓮。しかし深呼吸して落ち着く。

蓮:「...そうか。それで、君は?」

葵:「断りました。好きな人がいるからって」

蓮:「...ありがとう」

葵:「でも、蓮さんに伝えるべきか迷ってました」

蓮:「なぜ?」

葵:「あなたを不安にさせたくなくて」

蓮:「いや、教えてくれてありがとう。隠す方が辛い」

○カフェ 午後16時

蓮:「葵...一つ質問していい?」

葵:「はい」

蓮:「その男性社員...これからも一緒に仕事するんだよね?」

葵:「はい」

蓮:「飲み会とかも?」

葵:「あると思います」

蓮、拳を握りしめる。しかし笑顔を作る。

蓮:「そうか。仕事だもんね」

葵:「蓮さん...無理してませんか?」

蓮:「少し...でも、君を信じる」

葵:「ありがとうございます」



○神崎コーポレーション 社長室 翌日

仕事が手につかない蓮。

蓮:「葵は今頃...あの男性社員と...」

蓮:「やめろ! 信じるんだ!」

田中秘書が入ってくる。

田中秘書:「社長、大丈夫ですか?」

蓮:「大丈夫だ」

田中秘書:「顔色が悪いですが...」

蓮:「少し...葵のことで...」

田中秘書:「何かありましたか?」

蓮:「嫉妬に苦しんでいる」

田中秘書:「それは...自然なことでは?」

蓮:「でも、僕の場合は...」



○神崎コーポレーション 社長室 昼12時

田中秘書:「社長、嫉妬は誰でもします」

蓮:「でも、僕は行き過ぎる」

田中秘書:「以前とは違います。今は、ちゃんと自覚している」

蓮:「でも...苦しい」

田中秘書:「葵さんに話してみては?」

蓮:「また心配をかけてしまう」

田中秘書:「隠す方が良くないと思います」

蓮:「...そうだな」



○葵のアパート 夜20時

葵の家を訪れる蓮。初めての訪問。

葵:「どうぞ」

蓮:「お邪魔します」

二人、ソファに座る。

蓮:「実は...相談があって」

葵:「何ですか?」

蓮:「嫉妬が...止まらないんだ」

葵:「...」

蓮:「君を信じたい。でも、不安が消えない」

正直に打ち明ける蓮。



○葵のアパート 夜20時30分

葵:「わかりました」

蓮:「え?」

葵:「じゃあ、男性社員との飲み会は断ります」

蓮:「でも、それは君の自由を...」

葵:「これは私の選択です」

蓮:「でも...」

葵:「あなたが苦しむのを見たくない。それに、本当に大事な飲み会だけ参加すればいい」

蓮:「葵...」

葵:「これは妥協じゃなくて、配慮です」

蓮:「ありがとう...でも、僕はこれでいいのか?」



○心療内科 カウンセリングルーム 翌日

二人でカウンセリングを受ける。

カウンセラー:「葵さんが飲み会を控えると?」

葵:「はい」

カウンセラー:「それは、あなたの本心ですか?」

葵:「はい。蓮さんのためというより、二人のためです」

カウンセラー:「神崎さん、どう思いますか?」

蓮:「嬉しいけど...彼女の自由を奪っている気がして...」

カウンセラー:「でも、これは葵さんの選択です」

蓮:「でも...」

カウンセラー:「大事なのは、お互いに歩み寄ること。完璧を求めすぎないこと」



○カフェ 午後16時

カウンセリング後、カフェで話す二人。

蓮:「葵、僕も約束する」

葵:「何ですか?」

蓮:「君が飲み会に行っても、確認しない。信じる」

葵:「無理しないでください」

蓮:「無理じゃない。これが僕の成長だ」

葵:「じゃあ、私も約束します」

蓮:「何を?」

葵:「必ず連絡します。帰ったら、無事だよって」

蓮:「それは...僕のワガママだ」

葵:「いいえ。これは思いやりです」

二人、手を繋ぐ。



○公園 夕暮れ時 1週間後

散歩する二人。

蓮:「この一週間、君を信じることができた」

葵:「私も、あなたを信頼できました」

蓮:「完璧じゃないけど...」

葵:「完璧じゃなくていいんです」

蓮:「ありがとう。君がいてくれて」

葵:「私こそ」

夕日の中、抱き合う二人。



○心療内科 カウンセリングルーム 翌週

カウンセラー:「二人とも、よく乗り越えましたね」

蓮:「まだ不安はあります」

カウンセラー:「それで大丈夫です。不安がゼロになることはありません」

葵:「そうなんですか?」

カウンセラー:「ええ。大事なのは、不安と上手く付き合うこと」

蓮:「僕は...もう大丈夫でしょうか?」

カウンセラー:「ええ。もう十分です」

蓮:「!」

カウンセラー:「そろそろ、次のステップに進んでもいいでしょう」

葵:「次のステップ...?」



○カフェ 午後17時

カウンセリング後、二人きりで話す。

蓮:「葵...カウンセラーが、もう大丈夫だって」

葵:「はい」

蓮:「だから...聞きたいことがある」

葵:「何ですか?」

蓮、深呼吸する。

蓮:「僕と...付き合ってください。正式に」

葵:「!」

蓮:「これまでは、治療中だったから曖昧だった。でも、もう大丈夫だ」

葵:「蓮さん...」

蓮:「君の恋人になりたい。健全な恋人に」

涙ぐむ葵。

葵:「はい...喜んで」

二人、初めてキスをする。