歪んだ愛の果てに

○葵のアパート 朝7時

ベッドで目を覚ます葵。目は赤く腫れている。一晩中泣いていた様子。

葵:「もう...終わりだ...」

スマートフォンを見る。蓮から何十通ものメッセージと着信履歴。

全て無視する葵。

葵:「もう...信じない...」



○白川出版社 編集部 朝9時30分

遅刻して出社する葵。憔悴した様子。

佐々木:「葵ちゃん、大丈夫? 顔色悪いよ」

葵:「大丈夫...」

佐々木:「絶対嘘だよ。何があったの?」

葵:「...後で話す」

デスクに座ると、大きな花束が置かれている。

カードには「話を聞いてほしい。お願いだ。蓮」

葵:「...」

花束をゴミ箱に捨てる葵。

周囲が驚く。



○神崎コーポレーション 社長室 同時刻

やつれた様子の蓮。ここ数日、ほとんど眠れていない。

田中秘書が心配そうに見ている。

田中秘書:「社長、会議の時間ですが...」

蓮:「全てキャンセルしろ」

田中秘書:「でも...」

蓮:「出ていけ!」

田中秘書、退室する。

蓮、スマートフォンを見る。葵からの返信はない。

蓮:「葵...お願いだ...話を聞いて...」



○白川出版社 編集部 昼12時

隼人が葵を訪ねてくる。

隼人:「葵さん、少しいいですか?」

葵:「隼人さん...」

二人、会議室に移動する。



○白川出版社 会議室 昼12時15分

隼人:「昨日は、ひどいことを言ってしまいました」

葵:「いえ...真実を教えてくれて、ありがとうございました」

隼人:「でも、あなたを苦しめてしまった」

葵:「いいえ。知る権利がありました」

隼人:「葵さん...僕は明日、パリに発ちます」

葵:「!」

隼人:「やはり、行くことにしました」

葵:「そうですか...」

隼人:「ここにいても、あなたを見ているのがつらいから」

葵:「隼人さん...ごめんなさい...」

隼人:「謝らないでください。僕の選択です」



○白川出版社 会議室 昼12時30分

隼人:「最後に、一つだけ言わせてください」

葵:「はい」

隼人:「神崎さんのこと、まだ愛していますか?」

葵:「...わかりません」

隼人:「彼は危険です。また同じことを繰り返す」

葵:「わかっています」

隼人:「それでも?」

葵:「もう...関わらないつもりです」

隼人:「そうですか...では、これを」

封筒を渡す隼人。

葵:「これは?」

隼人:「神崎さんの監視の証拠です。僕が調べました」

葵:「え...?」



○白川出版社 会議室 昼12時45分

封筒を開ける葵。中には、写真と資料。

葵の部屋の監視記録、行動パターンの分析、GPS追跡の履歴。

葵:「これ...全部...?」

隼人:「過去6ヶ月分です。彼は全てを記録していました」

葵:「嘘...」

写真には、葵の日常の全てが映っている。

隼人:「これが、彼の『愛』です」

葵:「...」

隼人:「もし何かあったら、警察に持っていってください」

葵:「ありがとうございます...」

隼人:「では、さようなら。お元気で」

隼人、部屋を出る。

葵、一人残され、証拠を見つめる。

葵:「こんなに...こんなに監視されてたなんて...」



○美咲のアパート 夜20時

証拠を持って美咲の元へ行く葵。

美咲:「これ...ヤバすぎるでしょ!」

葵:「どうしよう...」

美咲:「警察に行くしかないよ!これ完全に犯罪だよ!」

葵:「でも...」

美咲:「でもじゃない! 葵、あなたまだ彼を庇う気?」

葵:「庇ってなんか...」

美咲:「じゃあなんで躊躇するの!?」

葵、答えられない。

美咲:「葵...あなた、本当に彼のこと好きなの?」

葵:「わからない...こんな証拠を見ても...嫌いになれない自分が怖い...」



○美咲のアパート 夜21時

美咲:「いい? 私が一緒に警察に行くから」

葵:「うん...」

美咲:「明日、行こう」

葵:「明日...」

美咲:「大丈夫。私がそばにいるから」

葵:「ありがとう...」

その時、葵のスマートフォンに着信。蓮から。

美咲:「出ちゃダメだよ」

葵:「...わかってる」

しかし、心は揺れている。



○蓮の自宅 同時刻

何度も葵に電話をかける蓮。繋がらない。

蓮:「葵...お願いだ...話を聞いて...!」

部屋を歩き回る。

蓮:「このままじゃ...完全に失ってしまう...」

葵のアパートの住所を見る。

蓮:「会いに行くべきか...いや、それこそ逆効果だ...」

苦しむ蓮。

カウンセラーに電話をかける。



○電話での会話 夜22時

カウンセラー(電話音声):「落ち着いてください、神崎さん」

蓮:「落ち着けない!彼女が...僕を完全に拒絶した...!」

カウンセラー(電話音声):「それは、あなたの行動の結果です」

蓮:「わかってる! でも...どうすれば...」

カウンセラー(電話音声):「今は、距離を置くしかありません」

蓮:「距離...?もう十分置いている!」

カウンセラー(電話音声):「いいえ。本当の意味で、彼女を自由にするのです」

蓮:「自由に...?」

カウンセラー(電話音声):「連絡も、監視も、全てをやめる。完全に」

蓮:「それは...彼女を失うということか...」

カウンセラー(電話音声):「逆です。それが、取り戻す唯一の方法かもしれません」



○蓮の自宅 夜23時

電話を切った蓮。深く考え込む。

蓮:「完全に...手放す...」

母の写真を見る。

蓮:「母さん...僕は、どうすれば...」

長い沈黙の後、決意する。

蓮:「わかった。全てを手放す」

田中秘書に電話をかける。

蓮:「明日、会社に来てくれ。重要な指示がある」



○神崎コーポレーション 社長室 翌朝9時

田中秘書が入ってくる。

田中秘書:「お呼びでしょうか」

蓮:「ああ。全ての監視システムを撤去しろ」

田中秘書:「もう撤去済みですが...」

蓮:「本当に全てか? GPSも、探偵も、情報収集も?」

田中秘書:「...いくつかは継続していました」

蓮:「全て、今すぐ停止しろ」

田中秘書:「承知しました」

蓮:「それから、隼人の栄転の件。白紙に戻せ」

田中秘書:「え?」

蓮:「彼の人生を、僕が操作すべきじゃなかった」

田中秘書:「...わかりました」



○警察署 相談室 昼13時

葵と美咲が警察官に証拠を見せている。

警察官:「これは...かなり悪質なストーカー行為ですね」

葵:「被害届を出したいです」

警察官:「わかりました。手続きを進めます」

葵:「彼を...逮捕してもらえますか?」

警察官:「証拠は十分です。すぐに動きます」

葵、複雑な表情。

葵:「(本当に...これでいいの...?)」



○警察署 捜査室 午後15時

刑事たちが逮捕状を準備している。

刑事A:「神崎蓮、か。大物だな」

刑事B:「証拠は十分だ。今夜、会社を出たところで任意同行だ」

刑事A:「了解」


○神崎コーポレーション前 夕方18時

退社する蓮。車に向かおうとすると、刑事たちが近づく。

刑事A:「神崎蓮さんですね」

蓮:「はい」

刑事A:「ストーカー規制法違反、不法侵入の疑いで、任意同行をお願いします」

蓮:「...わかりました」

抵抗せず、警察車両に乗り込む蓮。

田中秘書が駆け寄る。

田中秘書:「社長!」

蓮:「大丈夫だ。弁護士を呼んでくれ」

田中秘書:「すぐに!」

車が去っていく。



○警察署 取調室 夜19時

取り調べを受ける蓮。

刑事A:「これらの行為、認めますか?」

証拠の写真と資料を見せられる。

蓮:「...認めます」

刑事A:「なぜこんなことを?」

蓮:「彼女を愛していたから」

刑事B:「愛? これが愛ですか?」

蓮:「間違った愛でした。それは理解しています」

刑事A:「被害者は、相当な恐怖を感じていたようです」

蓮:「わかっています。全て、僕の責任です」

刑事B:「反省していますか?」

蓮:「はい。深く」



○葵のアパート 夜20時

警察から連絡が入る。

警察官(電話音声):「神崎蓮を任意同行しました」

葵:「...そうですか」

警察官(電話音声):「彼は全面的に罪を認めています」

葵:「...」

警察官(電話音声):「今後の手続きについて、また連絡します」

電話を切る葵。

葵:「終わった...本当に終わったんだ...」

しかし、涙が止まらない。

葵:「なんで...なんで泣いてるの...私...」



○警察署 面会室 夜22時

弁護士と話す蓮。

弁護士:「示談を提案しましょう。金額はいくらでも」

蓮:「いらない」

弁護士:「でも、前科がつきますよ」

蓮:「構わない。これは僕が受けるべき罰だ」

弁護士:「しかし...」

蓮:「彼女に謝罪したい。それだけだ」

弁護士:「被害者との接触は禁止されています」

蓮:「...わかっている」



○葵のアパート 深夜0時

ベッドで横になる葵。

葵:「これで良かったんだ...正しいことをしたんだ...」

しかし、心は痛む。

葵:「蓮さん...」



○警察署 留置場 深夜0時

留置場で座る蓮。

蓮:「葵...ごめん...」

蓮:「僕は...君を愛しすぎた...」

蓮:「でも、これで君は自由だ...」

壁に頭をつける蓮。

蓮:「これが...僕の罰だ...」