「……いえ」
葛城さんがゆっくりと、震える声を抑えきれない様子で告げた。
「通りました」
え?
「出版、決まりました! 柊さんの『星降る森のおくりもの』、今年の6月に出版されます!」
「うそ……」
一瞬、時間が止まった気がした。歓喜のあまり、個室の中で膝から崩れ落ちる。
「ほ、本当ですか!?」
「ええ。本当です」
葛城さんの声が、掠れている。
「会議では、最初かなり厳しい意見も出ました。『地味すぎる』『売れるか不安』って。正直、ダメかと思いました」
私は息を呑んだ。
「ところが、編集長が作品をじっくり読んでくれて。『こういう絵本が、今必要だ』って言ってくれたんです」
「編集長さんが……」
「はい。初版は控えめですが、丁寧にプロモーションしていこうって。それで、出版が決まりました」
涙が止まらない。個室の中で、私は声を上げて泣いた。
「ありがとうございます、本当に……」
「柊さんが頑張ったからですよ」
「葛城さんがいなかったら、私……ここまで来られませんでした……っ」
嗚咽が漏れる。
「柊さん、お祝いしましょう。明日の夜、空いてますか?」
「はい、空いてます」
私は、手の甲で涙を拭って答えた。
「詳細はまたメールしますね」
「はい」
電話を切った後も、涙は止まらなかった。4年間、諦めていた夢。それが叶った。私は個室の中で、小さく叫んだ。
「やった……!」
そして、もう一つ決めた。明日、葛城さんに気持ちを伝えよう。
今度こそ「好き」って、ちゃんと言おう。



