2月下旬。葛城さんから久しぶりにメールが届いた。
【柊さんへ
プレゼン資料、完成しました。
3月上旬の会議で、全力でプレゼンします。
良い結果になると、信じましょう。
葛城】
添付されたPDFファイルを開くと、そこには私の作品が美しくレイアウトされていた。
葛城さんがどれだけ時間をかけて、この作品に情熱を注いでくれたかが伝わってきた。
私は返信を打つ。
【葛城さんへ
素晴らしい資料を、ありがとうございます。
たとえ、結果がどうなっても
葛城さんとこの作品を作り上げられたこと、
心から感謝しています。
私も、良い結果になると信じています。
柊彩葉】
送信し、私は窓の外を見た。彼の資料に込められた、熱意を思い返す。
会いたい……早く会いたい。そして、気持ちを伝えたい。
◇
3月、第1週の水曜日。会社で仕事をしていると、スマホが鳴った。葛城さんからの電話だ。
私は慌ててトイレの個室に駆け込み、電話に出る。
「もしもし?」
「柊さん……」
葛城さんの声が、スマホ越しでも分かるほど疲れているように聞こえた。
たぶん、結果が出たんだよね? 私は覚悟を決めた。
「もしかして、会議……ダメでしたか?」
「……」
長い長い沈黙に、私の心臓が止まりそうになる。



