「この作品を、世に出したいからです」
葛城さんが真っ直ぐ私を見つめる。
「それに……柊さんと一緒に作品を作るの、楽しいんです」
その言葉に、私の頬がカッと熱くなった。
注文していたケーキが運ばれてくる。クリスマスの特別メニュー。雪のようなクリームと、鮮やかな苺の赤が眩しいショートケーキ。
窓の外では、雪が本格的に降り始めた。街灯の光に照らされて、雪がキラキラと輝いている。
「綺麗ですね」
「ええ」
私たちは並んで雪を眺める。
「柊さん、今日はクリスマスイブですね」
「はい」
「こうして一緒に過ごせて……嬉しいです」
胸の鼓動が、途端に速くなるのを感じた。
「私も……」
二人の間に沈黙が流れる。耳元で心臓がドクドクと鳴り響く。いつもとは違う空気。
仕事の打ち合わせ、というだけじゃない。特別な、クリスマスイブの夜。
「柊さん。俺、あなたと出会えて……本当に良かった」
その言葉に、私の胸が熱くなる。
彼にとって、私は仕事のパートナー以上の存在になれているのだろうか?
「私も……です」
葛城さんが、テーブルの上で手を動かす。そして、私の手にそっと触れた。一瞬、息が止まる。
葛城さんは手を引こうとしたが、私は逃さなかった。自ら指先をそっと重ねる。
彼の手のひらが、じんわりと温かい。
「来年も……」
葛城さんが言いかけて、言葉を飲み込んだ。彼の視線が泳ぐ。
「来年も?」



