「一緒に……ですか?」
「はい。俺が編集者として、アドバイスをする。あなたが作家として、作り直す」
彼は続けた。
「もちろん、出版の保証はできません。会社の企画会議を通るかどうかもわかりません。ですが、ちゃんとした形にして、社内で提案できるまでは持っていきたい」
私は唇を噛んだ。手が、震える。
「でも、私、仕事があって」
「週末だけでもいい。焦らずに、丁寧に」
「もし作っても、出版されなかったら……」
葛城さんが真っ直ぐ私を見た。
「それでもいいじゃないですか」
「えっ?」
「出版されるかどうかより、まず作ることが大事です。挑戦しないで諦めるより、挑戦して結果を知る方がいい」
その言葉に、涙が溢れそうになった。
「柊さん」
葛城さんが優しく言った。
「俺、あなたに会えて良かった。あの美術館で閉じ込められて、運命だと思いました」
私の頬が熱くなる。
「俺も、会社で苦しんでいました。『売れる企画を出せ』って言われて。だけど、柊さんと話して、思い出したんです。俺が編集者になった理由を。『心に残る作品を届けたい』って」
葛城さんの目は、真剣だ。
「だから、一緒に作りましょう。柊さんの作品を、世に出したい」
私は掌を握りしめる。
怖い。また挫折するかもしれない。だけど、この人と一緒なら……。
「……やってみます」
葛城さんが驚いたように目を見開く。
「本当ですか?」
「はい。怖いけど……もう、逃げたくないです。葛城さんが、信じてくれるなら」
葛城さんが、口元をゆるめた。
「ありがとうございます。一緒に、良い作品を作りましょう」
私も笑顔になった。葛城さんが手帳を開く。



