「庭の千草」狂詩曲

ダフィット教授に伴奏者を引き受けたことを伝えに行くと、ポツリ言った。

「また、お前か。もの好きだな」

ダフィット教授は笑っていた。

「クレア。君の好きな曲は?」

クレアは天井を見たり、腕組みをしたりして暫く考えこんだ。

「先生? 好きな曲……わかりません」

ダフィット教授の目はクレアを悲しげに見つめた。

「……私は君から、こんな簡単な答えさえも奪っていたんだな」

ダフィット教授は言いながら咽び泣き、クレアの手をさすった。

「ずいぶん酷使させた。なのに、君は愚痴1つ溢さずに……」

「先生。勝ちたいです。絶対に勝ちます。私、勝ちます」

「ーーガダニーニで勝つのは難題だぞ」

「それでも、先生。私はガダニーニで勝ちたいです」

「宗月、頼む」

ダフィット教授は俺に向かって、ゆっくりと頭を下げた。

憎まれ口しかきけない人だと思っていた。