「庭の千草」狂詩曲

看護師はカーテンの先を一瞥し、口元を押さえ押し黙った。

A型とO型の両親から、AB型の血液の子供は生まれない。

「そんなこと……」

ユリウスのため息もエィリッヒのため息も長く深く、重たかった。

ユリウスたちには20分ほどがやけに長く感じられた。

「終わりました。400ミリリットルずつ採血しましたから、暫く……15分は休んでください」

看護師はそう言うと、血液パックを両手に抱え退室した。

バタバタと廊下を走る忙しない足音が遠ざかると、ベッドに横になったユリウスたちに、カーテンの向こう側の沈黙と緊張が肌に刺さった。

2人は詩月に、どう声をかけていいのか解らなかった。

不意を突き、ドサリと鈍い音がした。

ユリウスたちは素早く身を起こした。

カーテン側のベッドに居たエィリッヒが、勢いよくカーテンを開けた。

ベッドに腰掛けていたはずの詩月の姿がない。

エィリッヒは慌てて、詩月が腰掛けていたベットに回りこんだ。