「庭の千草」狂詩曲

ダフィット教授が演奏家をやめたのも、ガダニーニを巡る楽団とのトラブルが理由だという記事を見つけた。

ダフィット教授が「呪われたヴァイオリン」と言われる楽器を、どんな経緯で手にし、演奏していたのか。

それはさすがに、資料を見つけられなかった。

俺は忙しい合間を縫って、クレアと会う時間を作った。

クレアのダフィット教授への尊敬ぶりは、尋常ではなかった。

信望、心酔……学生と教授の関係以上のものを感じた。

卒業から1年半余りがあっという間に過ぎた。

クレアは会うたび、教授の話ばかりした。

「何故、そこまでダフィット教授にこだわるんだ」

俺はつい苛立ち、クレアに訊ねた。

クレアはなかなか話そうとしなかった。

指の状態が良くないのは、明らかだった。

「治療はしていないのか」

問いつめた。

「医者には診てもらっているわ」

クレアはむきになって答えた。