「庭の千草」狂詩曲

父はダフィット先生に母と離婚した後、私と母と祖母のことを託していたそうだ。

ダフィット先生は父が何故、離婚したかも話してくれた。

父はヴァイオリン職人だった。

私が物心ついた頃、父は膵臓(すいぞう)がんで余命宣告されたそうだ。

父は先がないと知り、私たちに苦労をかけまいと貯金と生命保険を残し、離婚したそうだ。

父が身勝手で理不尽な理由で別れたのではないと知り、有りがたさと申し訳なさで胸がいっぱいになった。

ダフィット先生は事情を明かさずに、ずっと私たちを見守っていたんだと思った。

ただ先生だからという感情ではないものを感じた。

親子ほどの年の差で、先生。

惹かれてはいけないとわかっていても、惹かれていった。

宗月は卒業前にして益々忙しくなり、ピアニストとして華々しくデビューし、活躍の場が更に広がっていた。

時折、学内で会うたび心配してくれた。

ユリウスやエィリッヒから私の様子を聞いているのかも知れない。

宗月のことは良い先輩であり、優しいお兄さんのように思っていた。