「庭の千草」狂詩曲

「君には『シレーナ』を演奏するだけの才能がある。君の指はヴァイオリニストになるための指だ」

腱鞘炎と診断され治療を始めて間もなく、宗月は「しっかり治して。医者の言いつけは守れよ」と言ってくれた。

宗月はコンサートのオファーや、オーケストラとの共演など活動の場を拡げ、忙しく活躍し始めていた。

口喧しい先輩だと思った宗月が、どれだけ真剣に心配してくれていたかを思うと、後悔ばかりが先に立った。

ダフィット先生は課題を極力少なくしてくれた。

レッスン中も私の指の心配をし、一緒に医師の話を聞いてくれることもあった。

ユリウスとエィリッヒは大学院に進学する意志を固めたらしい。

ダフィット先生が倒れたと聞いたのは、2月初めだった。

「たいしたことはない」

ダフィット先生は何でもない風を装った。

10日ほど入院し復帰したが、本調子には見えなかった。