「庭の千草」狂詩曲

大学に入学する時、先生は私に「1流のヴァイオリニストになれ」と言った。

「この大学に入学以前、クレアへの指導とクレアの練習量は子ども騙しに過ぎなかった。才能は鍛えてこそ伸びる。悠長なことはしていられない」

「1流にするのと、無茶を強いるのとは違います」

ユリウスが宗月の腕を引っ張り、小声で「もうやめておけ」と言っていた。

私は気まずさで、顔を上げられなかった。

「3曲の内、1曲は『夏の名残りの薔薇(庭の千草)』を。後の2曲はクレアと俺で選曲します」

先生は再び机を叩いた。

「勝手にしろ」

声を荒らげ怒鳴ったかと思うと、扉を蹴り開け執務室を出て行った。

「おい、大丈夫か。相当、頭にきていたぞ」

「知るか。あんな変コツ! クレア、大丈夫だからな」

私は宗月に言われたものの、不安で押し潰されそうだった。

宗月がダフィット先生に喰ってかかったと云う噂は、翌日には大学中に知れ渡っていた。