「庭の千草」狂詩曲

ギリシャ神話に出てくる上半身は人間の女性、下半身は鳥の姿をした怪物だ。

ーー本当に存在しているヴァイオリンだったのか

驚きと感動で、胸の鼓動がバクバクしていた。

俺は益々、クレアと演奏したくなった。

「どうだね。いわゆる『ローレライ』だ。知っているだろう。恐ろしくはないのかね」

ダフィット教授はわざとオドロオドロしい声音で訊ねてきた。

「本当にローレライなのか、確めてみたいです」

俺はキッパリっ言い切った。

「良い返事だ。コンサート、楽しみにするとしよう」

クレアは不在。

俺と教授、2人切り。

クレアのヴァイオリンが、まさかそんな曰く付きの凄い楽器だとは思わなかった。

だが、どんなに楽器が凄くても演奏するのは、クレア自身だ。

音楽は楽器や技術をひけらして演奏するものではない。

俺はひと言、教授に言ってやりたかったが、グッと我慢した。