「庭の千草」狂詩曲

ユリウスと詩月は出入口の報道陣を上手く交わし、車に乗り込んだ。

「ハインツや父さんから何か聞いている? 指示は?」

「ハインツも宗月も退院するまでは何もしないと言っていた」

「そう、僕は覚悟はできているよ。ハインツに伝えて。何があろうと僕の父親は周桜宗月だ」

ユリウスは大きく頷いた。

詩月の言葉に目頭が熱くなった。

詩月が宗月の怪我の知らせに、コンクール会場から駆けつけてきた時の様子は、打ちひしがれ頼りなく悲愴感が(あらわ)だった。

見ていられないほど落ち込んでいた。

詩月が胸の内を悟られまいと、強がって言った言葉をユリウスはハッキリと覚えている。

ーーピアニストではない周桜宗月など認めない

詩月はそう言って、日本へ帰国して行った。

日本でどれほどの思いをし、誰と会い、何を掴んできたのか。

ユリウスは詩月がひと皮もふた皮も剥けて強くなったと思った。