「庭の千草」狂詩曲(ラプソディー)

詩月はエリザベート王立国際コンクールのファイナルで、チャイコフスキーの「懐かしい土地の思い出」を演奏した。

だが、彼は「懐かしい土地の思い出」は亡き師匠の十八番で、亡き師匠の仇討ちをするために、「懐かしい土地の思い出」を演奏したと言った。

さすがにエリザベート王立国際コンクールでは本気の演奏をしたはずだとは思う。

でも、ミヒャエルは詩月の十八番を詩月自身の口から直接、聞いていない。

ーー凄い……こんな詩月の演奏は知らない

ミヒャエルは詩月の演奏に釘付けになり、立ち尽くしたまま動けなかった。

ーー今までのヴァイオリン演奏は何だったんだ

「ミヒャエル、どうした? かけないのか」

客がミヒャエルのTシャツの裾を引き、ミヒャエルに訊ねたが、ミヒャエルには聞こえなかった。

ビアンカは詩月の演奏についていけず、ピアノ伴奏を諦め、聴き入っていた。