「庭の千草」狂詩曲

ーーダフィットはどんな教授で、どんな演奏をしていたのか。得意な曲は何だったのか。何故、母に曰く付きのヴァイオリンを託したのか

詩月は哀愁漂う調べに思いを込める。

愛する人を失い、たった1人の身内祖母を失ったクレアの心情を、喪失感と孤独感を儚く咲く1輪の薔薇に重ねた歌詞と重ねた。

宗月がどんな思いでクレアを愛したのか、どんな思いでダフィットの子を身ごもったクレアに求婚したのか。

詩月には理解できない。

なのに、演奏しながら思いがさらに熱くなった。

「詩月、居るか」

BALの扉が勢いよく開いたかと思うと、ガタガタと席を掻き分け大声がした。

「シーッ。うるせえよ、ミヒャエル。詩月が演奏中だ」

ミヒャエルは客に言われ、耳を澄ませた。

「……夏の名残りの薔薇」

ミヒャエルは久しぶりに聴く詩月のヴァイオリン演奏に、胸がカーッと熱くなった。