「庭の千草」狂詩曲

ビアンカがピアノを弾く準備を整えたのを確認すると、颯爽と演奏し始めた。

ビアンカは詩月がヴァイオリンケースからヴァイオリンを取り出すのを見ながら言った。

詩月はヴァイオリンを取り出し、ビアンカをちらっと見て、微かに笑った。

「シレーナはイタリア語。舟人を歌声で惑わせ食い殺す半人半鳥の怪物の名前だ、ギリシャ神話のセイレーン」

「あっ……ローレライ」

「そう。それがこのヴァイオリン、ガダニーニ作シレーナだ」

「ああ。だから時々、動画のコメントに『ローレライは音色を奏でな』とか『呪われるぞ』と書きこまれているんだ」

「書きこみだけか? 後をつけられたとか、嫌がらせは?」

「書きこみだけだよ。他には何も」

「少しでも変わったことや、おかしいとか恐いとか、危ないと感じた時は知らせろよ。いいな」

「うん、わかった」

「ビアンカ、始めよう」