「庭の千草」狂詩曲

「詩月、スッキリした顔だな。良かった」

マスターは詩月の顔を見ると、目を細めた。

詩月がカウンター席にゆっくり移動すると、サッと煎茶を淹れ「ティパックのお茶だが」と弁解した。

「祖母から名前を付けられた時の経緯を聞きました。詩月の『詩』は祖母の名前『詩子』から1字、『月』は周桜の家系には、代々『月』を付けると。それで、じゅうぶんだと思いました」

「そうかーー宗月は出産を知らせてきた時、嬉しそうだった。『俺とクレアの息子だ』と、あの時の声は忘れられない」

「父が退院したら3人で教授の墓に祈りたいと思います、ガダニーニを弾いて」

「彼は喜んで聴いてくれるだろう」

ビアンカはグラスを磨きながら、詩月とマスターの会話を聞いていたが、さっぱり意味が解らなかった。

「宗月には会ったか」

「いいえ、未だ。明日、リハビリと主治医から預かった診断書を渡しに行くので、父にも会ってきます」