「庭の千草」狂詩曲

ユリウスはマルグリットと入れ違いに、車庫に停めた車のトランクから詩月のスーツケースを取り出し、詩月の部屋に運んだ。

マルグリットはベッド脇に酸素吸入器を置き、詩月のヴァイオリン、ガダニーニの「シレーナ」は、机の上に置いた。

「ずいぶん疲れているようね」

「そうだな。機内食は味も濃いし塩分や糖分も多いから不要申請したらしい」

「では搭乗して半日以上、何も食べてないの?」

「そのようだ、無理に起こすのもかわいそうだ」

「無茶をするわね」

「仕方ないさ。詩月にとっては塩分量と水分の管理、怠ると体調に影響するからな」

マルグリットは「そうだったわね」と呟いた。

「座席もプレミアムエコノミークラスで帰ってきたそうだ。エコノミー症候群が心配だったんだろう。同行者も居ないし、さぞかし不安だっただろうね」

「詩子も彩月も心配していたわ。ユリウス、あなた気づいていた?」