「庭の千草」狂詩曲

「おい、その辺にしておけ」

理久が小百合の手を引き、小声で言った。

「退院して何日も経っていない。本調子ではないんだ」

理久は詩月に聞こえないように、小百合に耳打ちした。

「詩月、お参りは? もういいのか」

詩月の方に向き直り、訊ねる。

「帰るぞ」

「小百合。9月初め、ウィーンに戻る。向こうを拠点にするつもりはないんだ。取りたい資格を取ったら帰国しようと思っている。鈴子さんに宜しく」

「元気でいなさいよ。無理しないようにね」

「ああ」

理久は車を運転しながら、「良かったのか?」と訊ねた。

「彼女は入院前に会った時から何かを感じていたみたいだし、母とダフィット教授が一緒に写った写真を知っていた」

「大丈夫か?」

「言いたい放題だけど、あー見えて実は優しいし、しっかりしているんだ」

「あいつがリリィの孫と云うのが信じられないけどな」