「庭の千草」狂詩曲

怪我の具合がどうなのかも、定かではない。

ハインツが手術承諾書など諸々の書類にサインした、それはいかに手術が緊急を要する状態だったのかを物語っていた。

詩月は、それだけは察した。

ーーしっかりしなければ

「手術承諾書はハインツがサインした。クレアにもハインツが連絡をとってくれた。クレアも今日中には、こちらに着くだろう。ハインツは宗月のスケジュールキャンセルや謝罪に追われている」

ユリウスが無表情で伝えた。

詩月は「わかった」と答えて、ゆらり立ち上がった。

「何か飲み物を買ってくるよ。手術は長くなるんだよね」

「そうだな、まだ暫くかかりそうだ」

 ユリウスは力なく答えて、詩月を見上げた。

ーーお前が1番辛いだろうに。何故そんなに平然としているんだ

ユリウスの目が訴えていた。

「手術ができる、未だ続いている。それは未だ希望があるからだ」

詩月はユリウスに言いながら、自分自身に言い聞かせた。

「そんな顔していると、父さんが悲しむ」

詩月は自分自身を震い立たせ、手術室の前を離れた。

廊下を歩く足取りは意気がって言ったにも関わらず、重かった。