「庭の千草」狂詩曲

ヴァイオリンバージョンとピアノバージョンは詩月の演奏だ。

詩月がモルダウで演奏した「ヴァイオリンロマンス」は、万全ではなかった。

詩月自身、納得できる演奏ではなかった。

郁子には、できることなら完璧な「ヴァイオリンロマンス」の演奏を聴かせたかった。

「今、できることはやったんだ。郁子は満足したさ」

「うん……理久。9月初め、ウィーンに戻るよ」

「そうか。診断書など諸々書類の手配が必要だな。毎回、面倒だよな」

「搭乗日含めて7日以内だからね。……理久、XCEON のメンバーと事務所に明後日、アポが取れた」

「あいつらも2年半で、ずいぶん成長したし、出番が増えたんだがな。新型ウィルスの規制で、無観客コンサートやオンラインコンサートになって苦労しているようだ」

「彼らだけではないよ。音楽業界も楽団の練習がリモートになったり、チケットがキャンセルされたり」