「庭の千草」狂詩曲

詩月は淡々と話す郁子の表情を見つめながら、何を言われても平常心でいようと思った。

「ピアニストとしてやっていけないことが悔しくて、あなたが演奏している姿を観るのが辛い時もあったわ。あなたのお母さんにも、幾度か話を聞いてもらいに行ったのよ」

「母は何て?」

「演奏家を諦める覚悟、あなたはキッパリ納得できるのかと。何らかの形で音楽に携わっていく道を探るのか、ピアノは趣味で演奏するのか。しっかり考えて、納得して決断しなさい。後悔しないようにと」

「母は腱鞘炎で演奏家を諦めた時、そうなるまで練習した自分を後悔していた。ーー師匠の写真を見つめて泣いていた。自分が無理をして演奏してきた分、教え子には無理をさせない。でも君は母に相談したことで、母の言葉に主治医の診断に踊らされていないか」

詩月は初めて郁子の演奏を聴いた日のことを思い出していた。